メンタル不調・精神疾患の社員への対処、解雇を見据えた会社側の対応を徹底解説【弁護士監修】
メンタル不調・精神疾患の社員を放っておいた際の会社のリスク
近時、仕事のストレスや長時間・過重労働がメンタルヘルス不調の原因となることは、医学的知見として確立されています。
そのため、セクハラやパワハラといったある程度明確なハラスメントとは別に、上記のような業務に起因するメンタルヘルス不調が起こり、それが原因で休業・自殺が起こった場合、会社の責任が問われる場合があり、現に、そのような紛争事例が急増・多発しています。
休業・自殺の原因が業務にあると認定された場合、労災として保険給付がなされます。もっとも、労災保険給付は簡易迅速な被害者救済を目的とするものですので、その代わり、損害の全てカバーする内容にはなっていません。
したがって、保険でカバーされない部分(典型的には慰謝料)は、会社に対して損害賠償請求がなされる可能性があります。
メンタル不調・精神疾患の社員に対して会社側にできること
そのようなメンタル不調への会社対応としては、大別して、①平時のチェック体制、②休職等、③雇用契約終了、の3つに分けることが可能でしょう。
(1)平時のチェック体制を見直しましょう
上記のようなメンタルヘルス問題の高まりを受け、労働安全衛生法が改正され、平成27年12月から、通称「ストレスチェック制度」を設けることが義務化されました。
ただし、常時雇用従業員50人未満の事業場については、当分の間努力義務です。
労働安全衛生法66条の10第1項
…事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
頻度としては年1回実施し、労基署に報告する必要があります。問題が判明した場合において、従業員が医師による面接希望を申し出た場合は、会社はこれを実施せねばなりません。また、その結果を踏まえ、必要と認める場合には、当該労働者の実情を考慮し、適切な措置を講じる必要があります。
(2)休職
(平時のチェックにもかかわらず)従業員のメンタルヘルスに問題が発生して業務に支障が生じた場合、その回復可能性を見極めるためにも、まずは休職という措置を採ることが穏当であると考えられます。
実際には、
・ 医師の診断書を徴する
・ 休職期間中は無給とする
・ 長期にわたる場合は定期的な病状報告を求める
等の取扱いをする例が多く見られます。
その他、メンタルヘルス不調による休職については、リハビリ制度をどうするか、服飾の判断をどうするか、再発の場合の取扱いをどうするか等、実務上も難しい問題が多く存在します。したがって、予め就業規則等の規定を整備しておくことが強く望まれる分野といえます。
参考:リファレンスチェックで候補者の休職が分かる?把握するメリットや休職理由を解説 | ピタリク | 人材採用サービスの比較&資料請求サイト
(3)メンタル不調・精神疾患の社員を辞めさせることはできる?
日本の解雇規制は厳格ですから、上記のとおり、まずは休職発令を挟み、不調従業員の回復可能性の有無を検討すべきです。その結果、回復可能性なしと言わざるを得ない場合には、解雇に踏み切ることになるでしょう。
しかし人道的見地から、業務に起因するメンタル不調の療養休業期間中、及びその後30日間は、原則として解雇はできません。
労働基準法19条1項本文
…使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日…間は、解雇してはならない。
そのため、多くの場合は、休職期間満了時に復職の可否を吟味し、難しい場合に解雇するという流れになるでしょう。
そのようなケースで、後に解雇の有効性が問題となった場合、
ⅰ 精神疾患が業務に起因しているかどうか
ⅱ 復職の可否、回復可能性についての判断が医師の診断書等により客観的に裏付けられているか
等が重要なポイントとなります。
ハラスメント・メンタルヘルス問題に悩む企業に弁護士ができること
(1)法律相談・法的な観点からの対応アドバイス
以上のようなハラスメント問題は、特に最近は裁判で争われることも多くなっています。
したがって、事前予防・規程整備であるにせよ、結局、「ある規定・ある文言が実際に裁判で争われた場合、どのような判断がされるか」を見据えて行う必要性が高まっているといえます。
(2)顧問契約
ところで、法的な対処法とはいえ、数あるオプションの中からどれを選択すべきかは必ずしも法律論だけで結論が出るものではなく、御社の取引上の事情や経営方針等によって変わってくることもあると思います。
加えて、特に労使関係の法律問題については、問題が顕在化した背景に、実に長期にわたる根深い事情が横たわっていることが極めて多いといえます。西村綜合法律事務所では、そのような顧問先の会社様と平素より情報の共有を図り、労使紛争への迅速な対応を心掛けております。
(3)公益通報の外部窓口
これも近年、企業のCSR等が叫ばれていることを背景に、従業員が勤務先に不祥事があったと主張し、これを外部に通報する事案も増加しています。
かかる事案の背景にも、労使間の感情のすれ違い、当該従業員の会社に対する不満等がある場合も多く、紛争が顕在化する前に、中立的な(したがって顧問弁護士ではない)第三者が関与し、適切に従業員の声を吸い上げることが必要かつ有効であると考えられています。
西村綜合法律事務所では、企業向けにそのような外部通報窓口のご相談も承っております。
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