団体交渉を申し込まれた際の対処方法と対応時の注意点

「突然労働組合から団体交渉を申し込まれた」とお困りの法人からの相談を受けるケースがあります。加えて、企業内組合からだけでなく、近年では合同労組(ユニオン)から団体交渉を申し込まれるケースも目立っています。

組合の要求事項は解雇の撤回、未払い残業代の支払いなど多岐にわたります。組合との話し合いには気が進まないかもしれませんが、もし無視すれば不当労働行為として違法になるリスクが高いです。

本記事では、団体交渉に関する基礎知識や、団体交渉を申し込まれた会社の対処法を解説しています。

団体交渉の対応時に企業が注意すべきポイント

団体交渉の対応において企業が特に注意すべきポイントをまとめました。

応じるべき団体交渉なのか・不当な要求がないか見極める

そもそも応じるべき団体交渉かを見極める必要があります。

団体交渉拒否は不当労働行為になるとはいえ、相手が労働組合でないなど交渉権限がないケースでは応じる必要はありません。

また、相手に交渉権限があったとしても、組合の要求が団体交渉を義務付けられている事項(「義務的団交事項」)にあたらない場合には、会社は交渉に応じなくても構いません。

義務的団交事項とは、以下の事項のうち、使用者の立場で決定できるものをいいます。

  • 労働者の労働条件や経済的地位に関する事項(賃金、解雇、労働時間など)
  • 労使関係の運営に関係する事項(ストライキの手続きなど)

義務的団交事項について交渉に応じなかったり、出席しても誠実交渉義務に反したりすれば不当労働行為です。

不当労働行為が認められるケースでは、労働委員会から会社に「団体交渉をせよ」との救済命令が出ます。確定した命令に従わない会社は「50万円以下の過料」に処せられます。

救済命令に不服があれば裁判所に対して取消訴訟の提起も可能です。ただし、裁判所が労働委員会と同様の結論を出した場合、会社がそれに従わないと「1年以下の禁錮もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」の刑罰が科されます。

このように、団体交渉拒否を続けると法的なペナルティがあり、交渉には基本的に応じなければなりません。応じるべきかの判断が難しい場合には、弁護士などの法律の専門家に相談してください。

ただし、団体交渉に応じる義務があるからといって、不当な要求に応じる義務まではありません。

組合の要求が法的に不当でないかは事前に確認しておきましょう。

できる限り長期化せず企業の負担を軽くする

団体交渉が長期化すると会社にとって負担が大きくなります。

不当な団体交渉拒否により労働委員会や裁判所での争いになれば、解決までの時間が長引くため、必ず交渉のテーブルにはつきましょう。

ただし、労働組合は団体交渉のプロです。交渉に慣れない会社が主導権を組合側に握られてしまえば、要求が不当にエスカレートするリスクがあります。

誠実に交渉に応じてさえいれば、要求に応じなくても不当労働行為とはなりません。交渉が平行線をたどるのであれば、見切りをつけて打ち切ることも視野に入れてください。

対応・アドバイスしてもらえる弁護士を確保する

団体交渉に直接対応してくれたり、アドバイスをくれたりする弁護士を確保することは非常に重要です。

団体交渉については、そもそも交渉する義務があるか、要求にどこまで応じるべきかなど、判断が難しいポイントが多数あります。

弁護士に依頼すれば、不当労働行為を避けられるうえに、落としどころを見すえた交渉ができます。交渉への同席も可能なため、慣れていない企業にとっては心強い存在となるでしょう。

団体交渉弁護士に相談すべき理由

団体交渉における法律問題は複雑であり、弁護士に相談することで以下のようなメリットが得られます。

法的知識と経験

弁護士は労働法を専門的に理解しています。団体交渉のプロセスや手続き、必要な文書作成、各種法律や規則の適用等、難解な法律問題に対するアドバイスを得ることができます。

交渉のサポート

弁護士は交渉の過程で法的な視点からの助言を提供できます。特に、弁護士は交渉が平穏に進行するように努め、法的な紛争が発生しないようにするための支援を提供します

企業の権益保護

弁護士は企業の権益を保護するための戦略的アドバイスを提供します。労働者団体との交渉で合意に至らなかった場合、弁護士はストライキや他の労働行動に対する対策を提案します。

法的リスクの管理

弁護士は企業の法的リスクを想定し、そのリスクを最小限に抑えるための策を提案します。これには、団体交渉の結果生じる可能性のある法的責任の評価や、リスク回避のための戦略策定が含まれます。

団体交渉に関する基礎知識

ここで、団体交渉についての基礎知識を解説します。

団体交渉とは

団体交渉とは、労働者が組合を通じて労働条件などについて使用者と話し合いをすることです。

労働者は単独では使用者と話し合いをするのが事実上難しいため、労働組合を結成したうえで使用者と団体交渉する権利が、憲法や労働組合法で認められています。団体交渉では、賃金、解雇の撤回など様々な問題が議題となります。

労働者にとって、労働環境の改善に資する団体交渉は重要な権利です。使用者が団体交渉を正当な理由なく拒否すると「不当労働行為」として違法とされます。したがって、会社は労働組合からの団体交渉の申し入れに原則として応じなければなりません。

労働組合・合同労組とは

労働組合とは、法律上は「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義されています(労働組合法2条)。簡単にいえば、労働者が集団になって、賃金など待遇の改善を目指す組織です。

労働組合には様々な形態がありますが、我が国では企業内組合が中心となってきました。企業内組合とは、職種に関係なく企業単位で従業員により組織されている労働組合です。労働組合といえば企業内組合をイメージされる方も多いのではないでしょうか。

もっとも、企業内組合の多くは大企業に存在し、中小企業には少ないです。組合の組織率は減少傾向にあり、2021年6月30日時点で16.9%しかありません(参考:厚生労働省|令和3年労働組合基礎調査の概況)。組織率とは、雇用されている人のうち組合員である人の割合を意味します。組織率の低さは、企業内組合の存在感の低下を示しているといえるでしょう。

それに対して存在感を増しているのが、合同労組(ユニオン)です。合同労組とは地域単位で組織されている労働組合で、所属する企業や雇用形態に関係なく個人で組合員になれます。近年、企業内組合が存在しない中小企業の従業員や非正規の労働者が合同労組に加入し、会社に団体交渉を申し込む例が目立つようになっています。

労働組合から団体交渉を申し込まれた際の対処法

労働組合から会社に団体交渉が申し込まれた際の基本的な流れは以下のとおりです。

適切に対応しないと「不当労働行為」として違法になるリスクがあります。段階ごとの対処法を知っておきましょう。

ユニオン・労働組合からの団体交渉の申し入れ

まず、労働組合から会社に対して書面で団体交渉の申し入れがなされます。「団体交渉申入書」「要求書」といった名称の書面が郵送やFAXで届くのが一般的です。直接書類が会社に持参されるケースもあります。

注意して欲しいのが、書面を受け取らなかったり無視したりすると、団体交渉拒否として「不当労働行為」に該当し、違法となる可能性が高い点です。

正確にいうと「正当な理由」があれば団体交渉を拒否できますが、ほとんどのケースで「正当な理由」は認められないと考えてください。

たとえば、以下の理由は「正当な理由」に該当しません。

  • 従業員はすでに退職している
  • 組合員名簿が提出されていない
  • 合同労組(ユニオン)は会社と無関係の団体である
  • 上部団体の役員が出席する
  • 訴訟中の案件である

一度も交渉しない段階で団体交渉を拒むのは基本的に許されません。何らかの理由で拒めると判断したとしても、正当な理由かにあたるかを弁護士など法律の専門家に確認するようにしてください。

団体交渉前の予備折衝

団体交渉の申し入れが届いたら、実際の交渉に入る前に予備折衝をするのが一般的です。予備折衝では以下の事項を決定します。

労働組合が申入書で指定した内容に従う義務はありません。不利な条件で交渉に入ることにならないよう、次の点に注意してください。

日時

交渉の日程は、会社として準備期間を確保するため、近い時期は避けた方がよいでしょう。とはいえ何ヶ月も先の日程を提示すると交渉拒否ととられかねないため、一般的には数週間後が妥当だと考えられます。

また、勤務時間中の交渉は認める必要がありません。所定労働時間外に設定するべきです。

必要以上に長引くのを防ぐために、交渉時間についても「2時間程度」と事前に決めておくのがよいでしょう。

場所

交渉の場所は、社外の貸会議室などにするのが適切です。

社内にすれば他の従業員や取引先の目に触れるリスクがあり、組合事務所にすれば相手のペースに飲まれてしまう可能性があります。

貸会議室は中立的な場であるうえに、時間を区切りやすいメリットもあります。

貸会議室には費用がかかりますが、無用なトラブルを生まないよう、会社が全額負担した方がよいでしょう。また、あまりに遠方の貸会議室に指定すると交渉拒否とされるおそれがあるので注意してください。

出席者の人数

出席者の人数は、あらかじめ制限を設けておくことをおすすめします。

組合の方針によっては、大人数で押しかけて会社側に圧力をかけようとする可能性があります。そうなれば建設的な話し合いは困難です。「労使各3人まで」などと制限を設けるのが妥当でしょう。

 

団体交渉前の準備

団体交渉の前には入念な準備が必要です。

社内調査

予定されている議題について、事実関係を社内で調査しましょう。

残業代であれば勤務時間の記録や賃金の支払い状況、パワハラであれば関係者への事情聴取など、トラブルの内容によって調査すべき点は変わります。

事実関係を誤って把握していると、交渉の方向性もずれてしまいます。会社側に不利な事実にも目を向けるようにしてください。

対応方針の決定

事実関係を把握したら、交渉の対応方針を決めておきましょう。

労働者側の主張に不正確な点が多ければ、過度に譲歩する必要はありません。反対に会社側にも大きな落ち度があるのであれば、一定の譲歩が必要になります。

解決方法としては金銭の支払いが一般的であるため、どの程度の金額なら出してもよいか、落としどころを検討しておいてください。解雇の撤回が議題になっていても、金銭で解決する例が多いです。

資料の準備

場合によっては、組合側に示す資料の準備も必要になります。

たとえば残業代が議題のケースでは、労働時間や賃金支払い状況についてまとめた資料を準備しておくと有効です。客観的な資料があれば組合側も強硬な態度をとり続けるのが難しくなります。

出席者、発言者の決定

出席者も決定する必要があります。問題となっている事実関係に詳しい人や、一定の決裁権限がある人の中から選定するのがよいでしょう。

組合側が代表者の出席を求めるケースも多いですが、必ずしも出席する義務はありません。代表者が出席すれば、その場での決断を求められるリスクがあります。もっとも、代表者に権限が集中している会社では、出席しないと話し合いがまったく前に進まないと想定されるため、ケースバイケースです。

また、セクハラ・パワハラの加害者とされている従業員の出席が求められている場合には、感情的に責められる可能性が高いため安易に応じない方がよいでしょう。

出席者だけでなく、発言者も事前に決めておいてください。出席者が複数いても、発言者は議題ごとに原則としてひとりに限定するのが妥当です。複数の発言者がいて内容が食い違えば、組合側につけ込む隙を与えてしまいます。

 

当日の交渉

交渉当日は、少しのミスが致命傷につながりかねません。以下の点に注意してください。

誠実交渉義務を負う

交渉は、基本的に組合の要求に対して会社が回答する形で進行します。会社には誠実交渉義務が課されており、回答は根拠を示して丁寧にしなければなりません。

交渉の場に出席していても、質問にまともに取り合わず、表面的な対応に終始すれば誠実交渉義務に違反しているといえ、不当労働行為に該当します。

ただし、事前に議題に挙がっていないなど、その場で答えるのが難しい質問について回答を保留するのは差し支えありません。むしろ、まったく準備していない点についてその場の思いつきで回答するのは不適切です。次回までに回答を用意するようにしてください。

要求に応じる義務はない

注意して欲しいのが、会社には誠実に交渉する義務があるものの、組合の要求に応じる義務までは課されていない点です。無理な要求に対しては、根拠を示して説明すれば拒否しても構いません。

不用意な発言をしない、サインをしない

不用意な発言をしたり、最終的な合意事項以外にサインしたりするのは避けてください。

発言は録音されている可能性があります。事前に対応を決めていない事項について不用意な発言をすれば後から追及され、不利な立場に追い込まれるリスクがあります。

また、最終的な合意事項以外には絶対にサインしないでください。いかなる名目の書面であっても、「労働協約に該当する」と主張されかねません。労働協約は就業規則や個々の労働者との雇用契約よりも優先されてしまうため、安易に結ばないようにしましょう。組合側が作成した議事録へのサインも避けてください。

議事録・録音で記録に残す

交渉の内容は議事録や録音で記録に残すようにしてください。

交渉後の社内での検討に利用できるだけでなく、労働委員会や裁判所の場での争いに移行した際に証拠とできるメリットがあります。

「言った、言わない」の不毛な争いを避けるために、交渉内容は必ず会社側で記録を残しておきましょう。

 

団体交渉の終了

団体交渉の終わり方には、主に次の2つのパターンがあります。

労働協約の締結

交渉で合意に至れば、合意事項について労働協約を締結しましょう。労働協約は就業規則や個々の労働者との雇用契約よりも優先される強力な効力を有します。

書面には、他に債権債務がないことを確認する清算条項や、他の従業員への影響を避けるための口外禁止条項などを必要に応じて入れるようにしてください。

交渉決裂

団体交渉が決裂した場合には、労働委員会や裁判所での争いに移行する可能性が高いです。

労働委員会とは、使用者と労働組合の紛争を解決する行政機関であり、不当労働行為に対する救済命令を出す権限を有しています。組合側は労働委員会に救済申立てをすることが可能です。

裁判所に対しては、労働者が労働審判や訴訟を起こす可能性が想定されます。

また、組合が会社周辺でのビラ配り・街宣活動やストライキといった方法で対抗するケースもあります。

 

団体交渉対応は弁護士法人西村綜合法律事務所にご相談ください

ここまで、団体交渉を申し入れられた会社がとるべき対処法を中心に解説してきました。

多くの会社は団体交渉に慣れておらず、組合側のペースに巻き込まれて不当な要求を受け入れてしまうケースが少なくありません。弁護士に依頼して、法律違反を避けつつ、妥当な解決に導くのが非常に重要です。

弁護士法人西村綜合法律事務所は、団体交渉対応はもちろん、各種労務対策に精通しております。団体交渉を申し込まれてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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