労働組合(ユニオン)との団体交渉について【企業側の弁護士監修】

この記事では、外部労働組合(ユニオン)や企業内労働組合から団体交渉の申し入れを受けた際に、企業側が注意すべき点や具体的な対応方法、交渉の場で協議されやすい問題などを解説しています。

労働問題は日常的に発生することですので、経営者や人事担当者の方などにお読みいただきたい内容です。

団体交渉の申し入れを受けたらまずは弁護士へご相談を

外部組合やユニオンとの交渉は非常に難しいです

労働組合やユニオンとの団体交渉は、法律の専門知識と交渉経験がなければ極めて対応が困難です。彼らは交渉を専門とする職員が対応してくることが多く、事実確認が不十分なまま進めてしまうと、思わぬ譲歩を強いられるリスクがあります。

特に、外部ユニオンは良くも悪くも交渉に慣れているため、恫喝的な態度で譲歩を迫ってきたり、悪質なビラ配りやSNS活動などを行うケースも少なくありません。そのため、企業側が適切に対処するためには弁護士の介入が効果的といえます。

企業側には誠実交渉義務がある

労働組合法では、労働者から団体交渉の申し入れがあった場合、企業側には誠実に対応する義務があります。この義務を怠ると、「不当労働行為」として労働委員会への申し立てを受けるおそれがあり、企業の社会的信用を損なうことになります。

したがって、団体交渉の申し入れがあった場合は、内容にかかわらず真摯に対応することが求められます。

そのため、早期から最善の対策をとりましょう

団体交渉は、初動対応がその後の展開を大きく左右します。交渉の申し入れが届いた段階で弁護士に相談すれば、交渉方針の立案、必要な証拠の確保、社内調整の準備など、戦略的に備えることができます。交渉がこじれた場合のリスクを考慮しても、早期相談のメリットは非常に大きいといえるでしょう。

団体交渉の基礎知識

団体交渉とは

団体交渉とは、労働者の集まりである労働組合が、賃金、労働時間、解雇、ハラスメントなど、職場における労働条件の改善を目的として企業と交渉する制度です。労働組合法第7条第2号により、企業(使用者)には「誠実交渉義務」が課されています。つまり、交渉の申し入れを無視したり、一方的に拒否したりすれば、「不当労働行為」として労働委員会から救済命令が出されるおそれがあります。

特にユニオンや弁護士が同席する交渉では、労働側の主張が法的根拠に基づいて準備されているケースも多く、企業側が十分な知識や準備を持たずに対応すると、初動で不利な条件を受け入れてしまうおそれもあります。

労働組合とは

労働組合は、労働者が自主的に組織する団体で、2人以上いれば正社員でなくても結成できます。これは企業にとっては大きな意味を持ちます。たとえば、短期雇用のアルバイト2名が突如組合を結成し、過去の未払い残業代や有給休暇の未取得について団体交渉を申し入れる、といったことも法的には十分に可能です。

また、労働組合が結成されると、企業はその組合に対しても「誠実交渉義務」を負うことになります。つまり、たとえ小規模な組合であっても、適切な対応を怠れば、労働委員会での手続きに発展するリスクがあります。

ユニオンとは

ユニオン(合同労組・地域ユニオン)とは、特定の企業に限定されず、広く地域の労働者を支援する労働組合です。個人がすぐに加入でき、加入と同時にその人の代理人として企業に団体交渉を申し入れてくることが多いです。特に、中小企業や個人経営の事業者では、労務対応の専門人材が社内にいないことが多く、ユニオンからの申し入れに対して適切な対応がとれず、不利な状況に追い込まれるケースが増えています。

たとえば、「退職後の未払い残業代を請求されたが、記録が残っていなかった」「ハラスメントの相談を放置したと指摘され、慰謝料請求を受けた」といった案件で、ユニオンが介入したことで会社側が不利な形で合意してしまった事例もあります。

企業内労働組合とユニオンの違い

企業内組合は社内の労働者で構成され、経営とのバランスを保ちながら協議を進める傾向があります。一方、ユニオンは企業外からの立場で介入してくるため、経営状況や職場事情に関係なく、形式的な法令違反を軸に強硬な要求を突き付けてくることがあります。

そのため、企業にとってはユニオンとの団体交渉の方が交渉の難易度が高く、また、SNSなどでの情報拡散リスクや、労働委員会への申立てなど、企業イメージを大きく損なう懸念もあります。

団体交渉で労働組合・ユニオンと協議されることの例

解雇無効

不当解雇を主張して、解雇の撤回や職場復帰を求める内容が多く見られます。書面での解雇理由や証拠の整備が不十分だと、企業側が不利になることがあります。

未払い残業代および給与の請求

タイムカードや業務記録をもとに、過去数年間にわたる未払い賃金の請求が行われることがあります。請求金額が高額になることも多く、対応を誤ると多大なコストが発生します。

ハラスメント被害による慰謝料請求

上司からのパワハラやセクハラを理由に、慰謝料の支払いや再発防止措置を求める交渉がなされるケースもあります。加害者とされる社員への聞き取りや事実確認が重要です。

労働組合・ユニオンとの団体交渉における注意点

交渉の申入れを無視したり、出席を拒否したりしない

団体交渉の申し入れを無視することは、「不当労働行為」と判断されるおそれがあり、労働委員会での手続や損害賠償請求につながることがあります。たとえ要求内容に納得がいかなくても、話し合いの場には出る必要があります。

労働組合・ユニオンの指定した場所・日時に安易に応じない

相手方が指定する日時・場所が自社の業務や都合に合わない場合は、正当な理由をもって調整を申し入れることが可能です。安易に受け入れると、以後の交渉で不利になる場合があります。

労働組合・ユニオンに対して邪険な対応をしない

相手の態度が強硬であっても、冷静に対応することが大切です。感情的な対応をしてしまうと、交渉がエスカレートしたり、第三者機関に持ち込まれるリスクが高まります。

渡された書面へ安易に記名・押印しない

団体交渉では、交渉合意書や確認書をその場で求められることがありますが、内容に不明点がある場合や社内で検討が必要な場合は、即時に署名・押印せず、必ず弁護士に確認するようにしましょう。

当事務所にご相談(ご依頼)いただくメリット

弁護士が交渉に同席し、最善の協議ができる

当事務所の弁護士が交渉の場に同席することで、法的な根拠を踏まえた議論が可能になります。また、交渉の進行や記録の取り方にも配慮し、ご相談者様にとって有利な解決へと導きます。

不当労働行為のリスクを回避して交渉できる

弁護士が関与することで、企業側が誠実交渉義務を果たしながらも、誤った対応による不当労働行為リスクを最小限に抑えることができます。書面の内容や交渉経過を丁寧に管理することで、後の紛争に備えた記録も残せます。

裁判例や対応実績をもとに、落とし所を判断できる

当事務所では過去の団体交渉の対応実績や関連裁判例をもとに、どのような条件で交渉をまとめるべきか、具体的な見通しを立てたアドバイスが可能です。実務経験に裏打ちされた交渉力を活かして対応します。

団体交渉のご相談は西村綜合法律事務所まで

団体交渉は、初動を誤ると企業経営に大きな影響を及ぼす重大な局面です。適切な対処を講じるには、労働問題の対応実績を持つ法律の専門家に早期に相談することが重要です。

西村綜合法律事務所では、地元岡山に根差しながら、多数の労働問題に対応してきた経験豊富な弁護士が、迅速かつ丁寧に対応いたします。初回相談は無料、オンライン面談も可能ですので、遠方の企業様やお忙しいご担当者様もご安心ください。

 

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