債権回収について弁護士が解説

「取引先からの入金が滞っていて支払いに困っている」

「執拗に働きかけをしても債権の支払いに応じてもらえない」

「債務者へのアプローチ方法がわからずに、話し合いにすら応じてもらえない」

債権の回収は、債権者が頭を悩ませる典型的な問題の一つです。
企業経営をしていると売掛金の未回収や取引先の入金遅れといったトラブルは日常的に発生する可能性があり、直接訪問をしても支払いに応じてもらえず、そもそも話し合いにすら応じてもらえないなど、回収が困難なケースは多く存在します。

債権回収が困難なケースとは大きく以下の3つです。

(ⅰ)債務者の支払い能力が欠場している場合
(ⅱ)債務者に悪意があって、意図的に支払われない場合
(ⅲ)債権者側に瑕疵がある場合

売掛金や未収金を回収するには、債権者の財務状況を可能な限り調査し、債権回収の可否判断や催促に応じてもらうためのポイントの理解が重要になってきます。

以下では、債権回収の手順やポイントについてご説明いたします。

1、債権とは何を指すのか?

債権とはある者(債権者)が特定の人(債務者)に対して一定の行為を請求することができる権利を指します。
例えばあなたが友人にお金を貸した場合、あなたには友人に対して貸したお金を返すよう請求できる金銭債権(貸金債権)が生じることになります。

万一債務者である友人がお金を返してくれない場合には、債権を行使して強制執行や損害賠償を求めていくことになります。

2、債権回収をする場合の留意点

債権回収をする場合、あらかじめ確認をしておかなければならないことがあります。

以下では債権回収に入る前の留意点を3つご説明いたします。

(1)契約書を確認する

債権回収を検討するにあたり、まずは相手方との契約書の有無と契約書の内容を確認してください。

契約書の内容としては、契約書の当事者や支払い期限が到来していること、期限の利益喪失条項(債務者の期限の利益が喪失した場合には債権者は債務者に対して債権全額の一括返済を請求できるという条項)の有無、連帯保証人の指定等を確認していきます。

(2)債務者の現住所を確認する

債務者にお金を貸した後に債務者が住所を変更したり、行方不明になってしまった場合、いざ貸したお金を回収しようと債権者が債務者に書面を発送したとしても肝心の書面が本人に届かないケースがあります。
この場合、まずは債務者の現住所を特定する必要があります。

相手方の現住所が分からない場合でも、以前の住所が分かっている場合は住民票や戸籍の附票等の調査から把握することができることができます。

また住所がわからない場合でも、相手方の電話番号等から弁護士会照会制度(弁護士法23条の2に規定されている制度で、弁護士会が、官公庁や企業等の団体に対して必要事項を調査・照会することができます。)を利用することにより現住所を把握することができることもあります。

(3)債務者の財産を把握する

債務者から債権を回収しようとしても、債務者に財産がなく返済する意思も持たないような場合には実際は債権回収が困難であることも少なくありません。

たとえ裁判で「債務者は債権者に対して○○万円を支払え」「債務者は毎月養育費として○○万円支払え」といった判決を得たとしても、債務者がこれに素直に応じない場合は債権回収を強制執行によって図っていくことになります。

このような場合であっても、債務者がどこにどのような財産を持っているのか、また勤務先はどこであるのかといった債務者の財産に結び付く情報を把握していない場合には、まずは債務者の財産を把握する必要があります。

なぜなら、強制執行にあたっては債権者は債務者がどこに財産をもっており、どの財産に強制執行するのかを特定する必要があるからです。(例えば、相手の銀行口座を差押えるにしても、どの銀行に口座を保有しているのかを特定する必要があります。)
ですので、債権者がこのような債務者から債権回収をするためには債務者の財産の把握が必要不可欠といえます。

令和2年4月から改正民事執行法が施行され、以前に比べ財産開示手続制度(債権者が裁判所に申立てを行い債務者を裁判所に呼び出し、裁判所で債務者本人から債務者自身の財産について陳述させ、財産状況を開示させる制度)の条件が緩和され、第三者からの情報取得手続(裁判所が金融機関や関係行政機関等に問い合わせて、債務者の預貯金、不動産情報、給与債権などの情報の開示を求める制度)も新設されました。

この民事執行法の改正により、従来と比べ債権者は債務者の財産情報を把握しやすくなり、債権を回収できるケースも増加することが見込まれます。

債権回収にあたっては、債務者の財産を把握しておく必要があることをぜひ覚えておいてください。

3、債権回収の方法

当事務所へ債権回収をご相談いただいた場合、状況に合わせた最適な方法をご提案させていただきます。

債権回収に関して弁護士としてサポートできる方法は以下の通りです。

(1)弁護士が代理となって債務者に対して督促をする

債務者が債権者の要求にどうしても応じてこない場合には、弁護士が代理人となって債務者に催促をいたします。

弁護士が交渉にあたることで相手側の対応が変わり交渉がスムーズに進む可能性があります。

(2)弁護士から相手方に対し内容証明郵便を送る

こちらも上記同様、弁護士が代理人となって催促をすることにより相手方が支払いに応じる可能性を高めることができます。

内容証明郵便には「期限内に支払わなければ法的処置を講じる」旨を明記することで、相手方に「支払わないといけない」とプレッシャーをかけ支払いを促すことができます。

(3)民事調停手続

民事調停は裁判所を利用して話し合いにより債務者に支払いを求める手続きです。

弁護士を利用せずに調停を申し立てることも可能ですが、相手側が出頭しなかったり、不当な引き延ばしをしてきたりすると意味がなくなってしまいます。
弁護士に依頼することで相手方に圧力を掛けることができます。

(4)支払督促手続

支払督促手続は、一定の請求(金銭または有価証券の給付を目的とする請求)について債権者に簡易迅速に債務名義を取得させるための給付訴訟の代用手続です。
支払督促は支払督促の正本を簡易裁判所から債務者に送付してもらうことで行われます。

しかし債務者が支払督促に異議を申し立てた場合には、支払い督促の効力がなくなり通常訴訟へ移行されます。

督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは督促手続は終了し、支払督促に記載された債権を公的に認めてもらえます。
つまり支払督促は確定判決と同一の効力をもつことになります。

ただし、支払督促は債務者の住所地ないし事務所所在地の簡易裁判所書記官に申し立てる必要があり、債務者の住所が判明していない時には利用できません。

(5)少額訴訟手続

少額訴訟手続は60万円以下の金銭の支払いを請求する訴訟を提起する際に求めることができる特別な訴訟手続きで、原則として審理を1回のみで終わらせ判決を行います。

少額訴訟も債務者が応じず通常訴訟への移行を求めた場合には通常訴訟へ移行されます。

また、少額訴訟によってなされた判決に相手方が異議を申し立てた場合には再び審理をやり直さなければなりませんので安易にこの選択肢を取るべきではありません。

(6)保全処分の利用

訴訟を提起してから判決を得るまでの間に債務者が財産を処分してしまったり、破産する可能性がある場合は保全手続(仮差押・仮処分)を利用することで債権額の範囲内で債務者の財産を保全しておくことが可能です。

仮差押とは将来の金銭執行を保全するためあらかじめ債務者の財産を仮に差押えて確保しておく手続きのことをいい、仮処分とは金銭債権以外の特定物の給付請求権(例えば物の引渡請求権など)の執行を保全するため、その物の現状を維持しておく手続きです。

(7)訴訟手続(通常訴訟手続)

弁護士が代理人となって訴訟を行います。
この訴訟手続をとることで、公的に債権・売掛金を回収することができます。

訴訟手続きは債務者の住所が分からない場合であってもすることができ、公示送達によって判決を得ることが可能ですし、判決が出たにも関わらす債務者が支払いに応じない場合には債権者は判決を債務名義として債務者の財産に強制執行を行い債権の回収を図ることも可能です。

(8)強制執行手続

強制執行は、債務者の個別財産に対して債権者の個別的請求権の満足を目的としてなされます。

確定判決、和解調書、調停調書などは「債務名義」と呼ばれ、相手方が任意の支払いに応じない場合、この債務名義をもとに裁判所に強制執行を求めることができます。
強制執行には大きく分けて以下の3種類があります。

(ⅰ)不動産執行
土地や建物といった不動産の強制執行では、債務者の不動産は裁判所で競り売りにかけられ、不動産の売却代金から債権の回収を図ります。

(ⅱ)動産執行
動産執行は執行官がまず目的物の動産を差押え、これを換価し、換価代金を債権者に引き渡すことによってなされます。

動産執行の対象物としては民法の動産(民法86条2項)だけでなく、登記することのできない土地の定着物(庭木や庭石など)や株券等の有価証券も含まれます。

(ⅲ)債権執行
債権執行は執行裁判所が執行機関となり、裁判所の差押え命令によって手続が開始されます。

債権執行の中心は銀行預金の差押えです。
銀行預金を差押えれば、回収すべき金額の範囲内である限り差押時の預金残高をそのまま回収することができます。

強制執行手続は債権回収における最後の手段として非常に有効なものです。

(9)担保権の実行

債務者に対して担保を持っている場合、担保権を実行して債権を回収することもできます。

担保権の行使として最も多いものは抵当権の実行です。
抵当権を実行して債権の回収を図る場合、債権者は裁判所に対して抵当目的物の競売の申立てを行います。

この際、競売の申立て権者であることを示すために裁判所には基本的に抵当権の設定登記に関する登記事項証明書を提出します。
また、申立ては対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して行います。

(10)保証人から回収する

保証人とは、債務者が債務を履行しない場合に債務者に代わって債務を履行する約束をした者をいいます。
債権者は、債務者からの債権の回収が困難であるとき保証人がいる場合には保証人に債務の履行を請求することができます。

保証人には保証人と連帯保証人との2種類があり、それぞれ対応の仕方も違ってきます。

まず、債務者からの債権回収が困難な場合、連帯保証人が存在する場合は連帯保証人からの回収を検討します。
これは、連帯保証人は債務者と全く同じ義務を背負っており債務者本人と同等の扱いとなるため、より債権を回収しやすくなるからです。

また債権者から債務者の債権の支払いを請求された場合に、「債務者には弁済するだけの資力があり執行が容易であるので、保証人の私ではなく先に債務者本人に請求してください」と主張できるのは保証人のみであり、連帯保証人はこのような主張をすることができず、債権者から請求があった場合にはこれに応じなければなりません。

このように保証人から債権回収を望む場合においても、保証人か連帯保証人かで対応が異なりますので慎重に行う必要があります。

4、債務者が債務整理を行った場合

債務者が債務整理を行った場合には、債権全額の回収ができなくなる可能性が非常に高いです。

債務整理とは、債務者の借金を減額したり支払いに猶予を持たせることにより、債務者の受ける借金の負担を減らし借金問題を解決していくための手段の一つです。

債務整理には任意整理、特定調停、自己破産、民事再生の4種類があります。

このうち任意整理と特定調停に関しては、債務者がこれらの手続きによる救済を求めたとしても債務者としては法律上借金を減額する義務は生じませんので、なお債権金額全額の支払いを請求することができます。

一方で、自己破産や民事再生の手段を取った場合には、債権者には債務者より通知が届きますので、債権届を提出することで債務者財産の配当に加わることができるようになります。
そして配当に加わることにより、債務者財産のうちで換価可能なものについては原則として按分で返済を受けることができます。

よって債務者が債務整理を行うような状況においては、債務者は既に債務全額の返済が不可能な状態に陥っていると言えますので、債権者が債権全額を回収することは非常に困難であるケースが多いです。

5、時効について

債権回収を先延ばしにしていたり放置していると、債権が消滅時効にかかるおそれがあります。
そして債務者が消滅時効を援用した場合、債務者はその債務の弁済を免れます。

時効は「権利を行使することができるとき」から発生し、債権が消滅時効にかかる期間はその債権の種類によって異なりますが、2020年の民法改正により原則として5年で消滅時効にかかることになりました。(民法166条)

債権者が時効の進行を止める方法としては時効の更新措置があり、時効の更新措置をとることでそれまでに経過した時効期間をリセットすることができます。

時効更新措置の例としては債務者に対して訴訟を起こす、支払督促を行う、民事調停を申し立てる、債務の承認をしてもらう、債務の一部を弁済してもらうなどといった方法があります。

また、時効の期限が迫っていて時効が完成するまでに訴訟や支払督促の準備が難しい場合は、債務者に対して内容証明郵便を送ることで時効が完成するのを6か月延長することが可能です。
一度時効が成立をすると債権者は債務者に債務の履行を請求できなくなってしまうので注意が必要です。

6、債権回収を弁護士に依頼いただくメリット

債権の回収は債務者がなかなか支払いに応じてくれなかったり、そもそも話し合いにすら応じれくれないということがありますので非常に難しい問題です。
債権を回収できない期間が長くなると、逆に債権者の財政状況が圧迫され経営リスクを背負ってしまうことにもなりまねません。

債権回収を弁護士に依頼をしていただくことで、面倒な債務者との交渉や内容証明郵便などの書面の作成を代理で行うことが可能です。また、回収の可否判断や催促のポイントなどを法律の専門家の視点からお答えさせていただきます。

当事務所は債権者の皆様に対しより良い解決に向けたサポートをいたします。
どうぞお気軽にご相談ください。

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