口コミは削除できる?削除請求を行う際の流れと実施時のポイント

企業に対する悪質な口コミが掲載され、企業としては口コミを削除したいという場面に遭遇すると思います。その際、口コミを削除する方法について知る必要があります。そこで、以下では口コミの削除を行う際の流れと実施時のポイントについて説明させていただきます。

悪質な口コミに関する対処方法

悪質な口コミに関してどのように対処すべきかについて説明させていただきます。

掲載先への削除請求

まずは、悪質な口コミが掲載されているのが、口コミサイトや掲示板などであれば口コミサイトや掲示板などの掲載先である運営会社に対して削除請求することが考えられます。しかし、運営会社が削除の依頼に対して応じてくれるケースは多くはありません。なぜなら、運営会社としては、口コミを掲載させるサイトである以上、安易に口コミを削除してしまうと自己のサイトの役割を果たすことができなくなったり、ユーザーが自己のサイトに自由に書き込みをかけなくことを理由に口コミの投稿をやめたり、閲覧することをしなくなったりするおそれがあります。そのため、投稿数や閲覧数によって収益を上げているような運営会社は、削除依頼に応じることが自己のサイトの命取りになる危険性があるため、安易に応じることはないと考えた方が自然です。

書込みを行った人物の特定(発信者情報開示請求)

悪質な書込みを行った人物を特定する方法として発信者情報開示命令の申立てというのがあります。

発信者情報開示命令の申立ては2022年10月1日から施行されたもので、発信者情報特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下では、「プロバイダ責任制限法」といいます。)8条に基づいて行うことができます。これは、従来の発信者情報開示請求と同様の内容及び効果をもたらします。ただし、発信者情報開示請求よりも手続きのシンプルとなっている点で、発信者情報開示命令の申立てが利用しやすくなっています。

提供命令

発信者情報開示命令の手続きの付随申立てとして、「提供命令」(同法15条1項、2項)があります。

提供命令は、「他の開示役務提供者の氏名等情報」を申立人に提供するよう求めるという命令です。命令を受けたコンテンツプロバイダ(掲示板・SNSなどのユーザー投稿型サービスを提供する事業者)が自らアクセスプロバイダ(通信事業者)を調査し、当該調査した結果として判明した情報を申立人に提供することになります。

提供命令が決定すれば申立人にアクセスプロバイダの情報が提供され、これにより、申立人である開示請求者はIPアドレス等の情報を得なくても、次に開示請求を行うべきアクセスプロバイダを特定することが可能になります。

その結果、申立人がアクセスプロバイダに発信者情報開示命令の申立てをし、その旨をコンテンツプロバイダに通知したときは、コンテンツプロバイダはアクセスプロバイダに対し、自己が保有する発信者情報を提供します(同法15条1項2号)。提供命令を利用する場合には、コンテンツプロバイダが保有する発信者情報は開示請求者ではなくアクセスプロバイダに対して直接提供されることになります。

ただし、発信者情報開示命令を用いて発信者情報の開示をコンテンツプロバイダに対して求めることが可能です。

書込みを行った人物への損害賠償請求

悪質な口コミを行った人物に対しては、その口コミによって被った企業の損害について不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。

削除請求について

次に削除請求について説明させていただきます。

削除請求とは

削除請求とは、プロバイダ等に対して発信している情報を削除するように求める手続きをいいます。

削除の対象

プロバイダ等が削除しても発信者からの損害賠償責任を免れる投稿は、他人の権利を不当に侵害されていると信じるに足りる相当な理由があり(以下では、「権利侵害性」といいます。)、必要な範囲のものになります(プロバイダ責任制限法3条2項1号)。以下で具体的にどのようなものかについて説明させていただきます。

個別サイトの場合

個別サイトの場合、そのサイトに投稿された悪質な口コミ自体を削除の対象とすることができます。

検索サイト等の検索結果

検索サイト等の検索結果について削除請求を認めさせることは困難です。なぜなら、検索結果自体がどのように権利侵害性があるのかを具体的に主張することが困難だからです。仮に、知られたくない情報を公開されたという権利侵害を主張してもその情報を公開することによって生じる公共的な利益を考慮しても削除請求しなければならないとならければ削除請求は認められないため、ハードルとしては相当高いと言われています。

検索サイト上での関連ワード・サジェストワード

検索サイト上での関連ワード・サジェストワードとして表示される場合について削除請求を認めることは現時点では難しいと思われます。なぜなら、検索サイト上での関連ワード・サジェストワードは一定のアルゴリズムに応じて機械的に表示するもので、一義的な表現あるため、具体的な権利侵害性を立証することが困難だからです。そのため、検索結果について削除請求を実現するには、検索結果がどのように企業自身の権利を侵害しているか及びその侵害の程度が重大であるかを具体的に主張しなければなりません。したがって、ハードルとしてはかなり高いと考えた方がよいでしょう。

削除請求を行う場合の流れ

削除請求を行う場合の流れについて説明させていただきます。

オンラインでの削除請求

プロバイダ等に対するオンラインでの削除請求の手段としては問い合わせフォームを経由したり、電子メールを用いたりして削除請求をすることが考えられます。

書類送付による削除請求

プロバイダ等に対する書面送付による削除請求という手段としてはテレコムサービス協会ガイドライン書式の「迷惑防止措置依頼書」に必要事項を記入の上、郵送により請求することができます。また、内容証明郵便を郵送することによる削除請求も可能です。

悪質な口コミにお悩みの企業様は削除請求をご検討ください

悪質な口コミを早期に削除し、企業の信用を回復するためには、削除請求をすることが適切なことが多いです。そして、削除請求をする際にどのような事情や証拠を提出すべきかについては法的知識が必要となります。また、悪質な口コミについてプロバイダ等がプロバイダ責任制限法に基づいて削除請求に応じなかった場合には、裁判手続きによる削除請求も手段として考えられます。そのため、悪質な口コミへの対応にお悩みの企業様は是非一度法律の専門家である弁護士にご相談下さい。

「口コミは削除できる?削除請求を行う際の流れと実施時のポイント」の関連記事はこちら

弁護士法人 西村綜合法律事務所の特化サイト

お気軽にお電話ください 03-3237-3515  
電話受付:平日・土日祝 9:00~18:00