パワハラやセクハラを繰り返す社員は解雇できる?企業向けハラスメント対応を解説
パワハラ、セクハラによる会社内のトラブルはもはや避けては通れない問題であり、経営者や人事担当者の悩みの種といっても過言ではありません。
この記事では、セクハラ・パワハラの基準や具体例、ハラスメント行為を繰り返す社員への対処や解雇手続きについて解説します。
セクハラ・パワハラの基準や具体例について
セクハラの定義
セクハラとは、職場において性的な言動が行われ、それにより労働環境が悪化する行為を指します。
具体的には、性的な言動が職場での待遇に影響を与える「対価型」と、職場環境を害する「環境型」に分けられます。
対価型セクハラは、昇進や評価に関わる場面で性的な要求をするケースを指し、環境型セクハラは日常的な業務環境を悪化させる言動を指します。
セクハラの具体例
同僚や上司からの不適切な性的な発言や冗談: 例: 職場の飲み会で、上司が部下に対して「君のスカートは短すぎるんじゃない?」と発言する。
仕事と関係のない性的な話題や質問: 例: 業務中に同僚が「彼氏とどんなデートをしているの?」とプライベートな質問を繰り返す。
性的な画像や動画を職場で見せる: 例: オフィスで同僚がパソコンの画面で性的な画像を見ているのを他の社員に見せる。
望まない身体的接触や接近: 例: 会議中に上司が部下の肩に手を置くなど、不必要な身体接触を行う。
パワハラの定義
パワハラとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものを指します。パワハラは、以下のような種類があります。
パワハラの具体例
暴言や暴力: 例: 会議中に上司が部下に対して「使えない奴だな!」と怒鳴る。また、ミーティングで資料を投げつけるなどの暴力行為を行う。
過剰な業務の押し付けや無理な仕事の強要: 例: 上司が部下に対して、「明日までにこの膨大な資料を全部まとめておけ」と過剰な業務を強要する。
仕事に必要な情報を与えない、無視する: 例: 部下が業務に必要な資料や情報を求めても上司が無視し、適切な指示を出さない。同僚が集団で無視する。
不当に低い評価を与える: 例: 業績が良好であっても、上司が個人的な感情で部下に不当に低い評価を与える。
プライバシーを侵害する:労働者を職場外で継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする。
会社内でハラスメント行為が発覚した際にまずするべきこと
被害者および加害者のプライバシー保護
ハラスメント行為が発覚した際には、まず被害者と加害者のプライバシーを保護することが重要です。
例えば、調査を進める際には、関係者以外には情報を漏らさないように徹底し、関係者からの情報提供も匿名で行うことができるようにします。プライバシー保護の観点から、被害者の精神的負担を軽減し、安心して問題解決に取り組む環境を整えます。
迅速な事実確認
ハラスメント行為が発覚した場合、迅速に事実確認を行うことが次のステップです。
まず、被害者および関係者からの聞き取り調査を行い、証拠の収集を開始します。この過程では、メールやメッセージ、録音などの具体的な証拠を確保し、万が一の法的トラブルに備えます。
被害者の日記やメモ、同僚の証言などが重要な証拠となることがあります。また、この段階では結論を決めつけずに、被害者の言い分を傾聴することが大切になります。
再発防止策の実施
ハラスメント行為が確認された場合、再発防止策を速やかに実施することが必要です。
再発防止策の例:配置転換
ハラスメントの発生源となった社員を別の部署に配置転換することで、再発のリスクを軽減します。
再発防止策の例:適切な処分
ハラスメント行為を行った社員に対して、適切な指導や懲戒処分を実施します。
もちろん「正当な指摘や注意」や「適切なコミュニケーション」の範疇を超えたハラスメント行為であることが前提ですが、再発防止のための指導を行うことは必須と言えるでしょう。また、上司が部下を殴る、女性社員の身体に触れるといった深刻なハラスメント行為があった場合は降格処分や解雇を検討するべきです。
適切な対処をすることで他の社員への抑止力にもなりますので、ハラスメント行為が容認されない職場環境を作ることにも繋がります。
再発防止策の例:パワハラ防止研修
全社員を対象にパワハラ防止研修を実施し、ハラスメント行為の理解と予防策を周知することも有効な対策です。
全社員がハラスメント行為の深刻さを認識し、再発防止に向けた意識を高めることが長期的には重要な取り組みとなります。
就業規則や通報窓口について弁護士への相談もご検討ください
ハラスメント行為の防止や処分については、就業規則に明記することが重要です。また、通報窓口を設置し、社員が安心して相談できる環境を整えることも必要です。
法律の専門家である弁護士の助言を受け、会社ごとに合った適切な運用方法を検討し、信頼性の高い制度を構築することをお勧めいたします。
ハラスメントを繰り返す社員の解雇は可能?
継続的な指導をしてもハラスメント繰り返す場合は解雇が可能です
ハラスメント行為を繰り返す社員に対しては、何度も改善指導を行っても改善が見られない場合、解雇が可能な場合があります。
例えば、何度も書面で注意を受けたにもかかわらず、部下に対する暴言や嫌がらせを止めなかった上司が最終的に解雇されたケースというのは解雇が認められることも少なくありません。
重要なのは、解雇の前に十分な証拠を収集し、適切な手続きを踏むことです。
就業規則にてハラスメントが解雇事由に該当するかも確認しましょう
解雇を検討する際には、まず就業規則を確認し、ハラスメントが解雇事由として明記されているかを確認しましょう。
就業規則に「度重なるハラスメント行為は解雇事由となる」といったことが明記されていれば、解雇の正当性が確保されやすくなります。
また、こうした規定があることで、社員に対してハラスメント行為が許されないことを周知することにも繋がります。
ハラスメント行為による解雇の進め方
当事者以外からの話も聞き、客観的事実を調査しましょう
解雇を進める前に、関係者全員から話を聞き、客観的な事実を調査することが不可欠です。
例えば、ハラスメントが行われた場面に居合わせた同僚や第三者の証言を集めることで、状況をより正確に把握できます。証言だけでなく、メールやメモなどの物的証拠も併せて収集します。
ハラスメントに該当するかどうか判断する
集めた情報をもとにハラスメントに該当するかどうか判断しましょう。
また、ハラスメントに該当するかどうかの判断は弁護士に相談のうえ実施することをお勧めいたします。弁護士の専門的な視点で事実関係を評価することで、誤った対応を避けることができます。
訴訟リスクを見据えた調査報告書を作成する
訴訟リスクを見据え、詳細な調査報告書を作成します。
事実関係の詳細/証拠/関係者の証言などを整理し、解雇が正当であることを証明するための重要な資料となります。
解雇等を検討している旨を加害者に伝え、弁明の機会を与える
加害者に対して、解雇等を検討していることを伝え、弁明の機会を与えます。
これは公正な処分を行うために重要な手続きとなっており、加害者には自身の行為について説明する機会を提供し、会社側は言い分を踏まえて必要がある場合には、さらに聞き取り調査を実施します。
解雇通知書を作成した上で、本人に解雇を伝える
加害者の言い分も確認した上で解雇すると決定した場合、解雇通知書を作成し、本人に解雇を伝えます。
この通知書には、解雇理由や解雇日を明記し、法的な手続きを遵守するという意味合いがあります。
通知書の内容は明確かつ具体的に記載し、後々のトラブルを避けるための対策という意識で進めましょう。
ハラスメント行為を繰り返す社員について弁護士に相談するメリット
ハラスメントの基準について相談できる
弁護士に相談することで、どのような行為がハラスメントに該当するのか明確に理解することができます。
例えば、上司からの無視や過剰な業務の押し付けがパワハラに該当するかどうか、それとも業務や指導の一環として認められるのか、客観的な判断が可能です。
訴訟リスクを抑えた対応が可能になる
弁護士の助言を受けることで、訴訟リスクを抑えた対応が可能となります。法的に適切な手続きを踏むことで、企業のリスクを最小限に抑えます。
合理的な再発防止策の提案・整備が可能になる
再発防止のためには、実効性のある対策が必要です。
弁護士は、ハラスメント防止のための研修プログラムの導入や、通報窓口の設置など、具体的な防止策を提案します。
例えば、定期的なパワハラ防止研修を実施することで、社員全体の意識を高め、ハラスメント行為の発生を防ぐことができます。
解雇に踏み切る際、適法な手続きで進めることができる
ハラスメント行為を繰り返す社員であっても、解雇する際には法的な手続きを遵守することが不可欠です。
弁護士は、解雇理由の明確化や適切な証拠の収集、事前の警告や指導など、解雇手続きを進めるための具体的なアドバイスを提供します。これにより、不当解雇として訴えられるリスクを下げることが可能です。
繰り返されるハラスメント問題は弁護士にご相談ください
ハラスメント問題は企業にとって大きなリスクとなります。
西村綜合法律事務所では、地元岡山に密着し、多数の法律問題を解決してきた経験豊富な弁護士が迅速に対応いたします。
企業内のハラスメント問題に関するお悩みやご相談がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。企業様にとって有利な解決策を見つけるお手伝いをいたします。