景表法(景品表示法)違反の判断基準って?業務上の注意点や法的リスクを弁護士が解説
景品表示法(景表法)は、一般消費者の利益を保護するために、商品・サービスの内容について著しく優良である、同取引条件について著しく有利であると一般消費者に誤認される表示や過剰な景品類の提供を規制する法律です。
本記事では、どんな表示や販売方法が違反になるのか、そして違反した場合に受ける命令等について分かりやすく解説します。
また、景表法違反を防ぐためのチェックポイント や、弁護士に相談するメリットについても紹介します。自社の広告やキャンペーンが違反にならないよう、しっかり確認しておきましょう。
そもそも景品表示法って?
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする法律です。
かかる目的を達成するため、以下の2つの主要な規制が設けられています。
規制(1) 不当表示規制
不当表示規制とは、以下の優良誤認表示、有利誤認表示その他誤認されるおそれのある表示を不当表示として禁止する規制です。
特に、以下のような表示は景品表示法に違反する可能性があります。
- 優良誤認表示:商品・サービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のもの又は事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると示す表示(例:「医学的に証明されたダイエット効果!」といった根拠のない広告)。
- 有利誤認表示:商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(例:「今だけ半額!」と記載しながら、実際には長期間同じ割引を行っている)。
- その他誤認されるおそれのある表示:上記のほか、商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、内閣総理大臣が指定するもの(例:「限定100個」と宣伝しながら、実際には在庫が十分にある)。
規制(2) 景品規制
景品規制は、企業が販売促進のために提供する景品の金額や内容に制限を設けるものです。
特に以下のようなケースが違反となります。
- 一定額以上の景品を提供する(例えば、商品価格の50%以上の景品をつけるなど)。
- 購入しないと受け取れない「抱き合わせ販売」的な景品を提供する。
- 消費者が誤解するような無料提供の宣伝(例:「今だけ無料!」と表示しながら、後で料金を請求する)。
どちらの規制も「一般消費者の利益を保護するため」に存在します
これらの規制は、消費者が誤った情報を基に商品を購入したり、不適切な販売促進に誘導されたりすることを防ぐために設けられています。
企業が誠実な広告や適切な景品提供を行うことで、消費者との信頼関係を築き、公正な市場競争を促進することができます。
景品表示法に違反しているかどうかの判断基準
景品表示法では、不当な表示や景品類の提供を制限し、消費者を保護することが目的とされています。以下の基準に当てはまる場合、違反となる可能性があります。
不当表示(誤認されるおそれのある表示)
(1)優良誤認表示(品質、規格その他の内容を偽る)
- 実際の品質や性能よりも著しく優れているように見せかけている
- 科学的根拠のない「No.1」「最高品質」「業界唯一」といった表現をしている
- 効果・効能を過大に強調し、消費者が誤解する可能性がある(例:「この化粧品で10歳若返る!」)
- 試験データや実験結果を歪めて掲載している
(2)有利誤認表示(価格その他の取引条件を偽る)
- 実際よりも安く見せかける二重価格表示(例:元値を実際より高く設定し、割引率を大きく見せる)
- 期間限定セールを実際には長期間継続する(例:「本日限りの大特価!」としながら、実際には常に同じ価格で販売)
- 無料・特典付きと謳いながら、実際には別途料金が発生する
- 他社より圧倒的に有利な条件であるかのように錯覚させる
(3)その他誤認されるおそれのある表示
- 限定販売・数量限定と表示しながら、実際には十分な在庫がある
- 実際には提供しないサービス・特典を掲載している
景品類の提供に関する違反
(1)過大な景品の提供
- 取引額に応じた景品が、法定の限度額を超えている(一般懸賞、共同懸賞など)
- 業界の自主規制を無視して過剰な景品を提供している
(2)不当な無料提供・抱き合わせ販売
- 実際には有償であるにも関わらず、「無料」と表記している
- 購入しないと本来の価値が得られない景品(例:「この商品を買えば無料の特典がつきます」と言いながら、特典の価格を商品価格に含めている)
実証責任の違反(不実証広告規制)
- 「業界No.1」「99%の人が満足」といった表現に対し、合理的なデータ・証拠がない
- 「特許技術」「科学的に証明済み」などの表示に根拠がない
- 医療・健康分野での広告で、専門機関の認可を得ていないのに「効果を保証する」と表記
消費者庁の措置命令・行政処分対象になりやすいケース
- 繰り返し不当表示を行っている(過去に指摘されたにも関わらず改善しない)
- 競合他社と比較し、根拠なく自社を優位に見せている
- SNSや口コミサイトを利用し、意図的に高評価を偽装している
消費者に誤解を与える販売手法
- 定期購入を「単品購入」と誤解させる表記(例:「初回無料!」と書きながら、実際には定期購入契約が前提になっている)
- 解約方法を意図的に分かりにくくする(例:ネット申し込みは簡単だが、解約は電話のみ対応など)
- 「モニター価格」「試用版」として販売し、消費者を勘違いさせる
H2 景表法(景品表示法)に違反するとどんな制裁を受ける?
景品表示法に違反した場合、企業にはさまざまな法的責任が発生します。
主に、措置命令、課徴金納付命令があります。これらの処分は、違反の重大性や継続性に応じて適用されます。
措置命令(景品表示法7条1項)
措置命令とは、消費者庁が調査の結果違反行為を確認した際に発出する行政命令です。
措置命令を受けた企業は、以下の対応を求められます。
- 違反行為の公表:企業名や違反内容が消費者庁のウェブサイトなどで公開される。
- 再発防止策の実施:誤解を招いた広告や販売方法を改善し、再発防止策を講じる必要がある。
- 消費者への周知:場合によっては、消費者に対し誤解を招いた表示の訂正を行うことが求められる。
措置命令を受けると企業の信用が低下し、経済的な影響だけでなく、ブランド価値の毀損にもつながるため、十分な注意が必要です。
課徴金納付命令(景品表示法8条1項)
特に優良誤認表示や有利誤認表示に該当する違反があった場合、消費者庁は企業に対して課徴金の納付を命じることができます。
この課徴金は、違反行為に基づく売上の3%が基準となり、多額の経済的負担を伴う可能性があります。
例えば、違法な広告によって1年間で10億円の売上を得た場合、課徴金は3,000万円にのぼることもあります。企業にとっては、適正な表示を行うことが、経済的なリスクを避けるうえでも重要です。
刑事罰(景品表示法46条以下)
景品表示法違反が特に悪質な場合、刑事罰の対象となることもあります。
例えば、次のようなケースです。
- 故意に消費者を欺くような虚偽広告を継続的に行っていた。
- 大規模な詐欺的な販売手法を用いていた。
- 行政処分を受けた後も改善せず、同様の違反を繰り返した。
このような場合、役員や担当者個人が逮捕される可能性もあり、法人に対しても罰金が科される可能性があります。
景表法(景品表示法)について弁護士に相談するべき理由
景品表示法は、日々のマーケティング活動に直結する法律であるため、知らず知らずのうちに違反してしまうリスクがあります。
弁護士に相談することで、事前にリスクを回避し、適正な広告・販売手法を確立できます。
気づかないうちに違反してしまうといった事態を予防できる
企業の広告担当者やマーケティング担当者が、無意識のうちに景品表示法に違反してしまうケースは少なくありません。
例えば、「No.1」「最安値」「限定100個」といった表現は、適切な根拠がなければ違反となる可能性があります。
弁護士に相談することで、広告やキャンペーン内容を事前にチェックし、法的リスクを未然に防ぐことが可能です。
表示の適正な管理における社内体制の整備ができる
景品表示法第22条第1項では、企業が適正な表示管理を行うための体制整備を義務づけています。
これは、事業者が適切な表示を行うためのルールを社内で明確にし、従業員に周知することが求められていることを意味します。
弁護士と連携することで、適正表示のための社内ルールを策定し、従業員向けの教育プログラムを導入することができます。また、広告やキャンペーン実施前のチェックフローを確立することで、企業としてのコンプライアンス体制を強化できます。
顧問弁護士を活用し継続的なチェックを実施できる
景品表示法違反は、一度のチェックではなく、継続的な管理が重要です。広告内容は頻繁に変わり、新しいキャンペーンを実施するたびに適法性を確認する必要があります。
顧問弁護士を活用することで、新しい広告やキャンペーンの適法性を随時チェックでき、景品表示法違反のリスクを最小限に抑えることができます。企業の信頼を守り、トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士との連携が有効です。
景表法(景品表示法)については西村綜合法律事務所へご相談ください
景品表示法違反かどうかは、「一般消費者が誤認するおそれがあるか」「表示内容が実際のもの等より著しく異なるか」という観点から判断されます。
特に「事実に基づかない優良誤認・有利誤認表示」「過大な景品の提供」「証拠のないNo.1表記」「不適切な無料・割引キャンペーン」などは、行政処分の対象となる可能性が高いため、十分な注意が必要です。
弁護士や専門家に相談し、事前に適法な広告・販売方法を整備することが、企業のリスク管理につながります。