休職を繰り返してしまう医師・看護師への適切な対応【人事労務に強い弁護士監修】
本記事では、医療法人の経営者や人事担当者に向けて、休職を繰り返す医師・看護師への対応について解説いたします。
メンタルヘルス不調を理由とした長期休職や、復職と再休職を繰り返す事例が増える中、医療現場の運営に深刻な影響を与えるケースも見られます。
対応を誤れば、労務トラブルや訴訟、他職員のモチベーション低下といったリスクにも直結するため、制度整備・文書化・対応フローの確立は必須と言えるため、ぜひ本記事の内容をご活用いただければ幸いです。
なぜ「休職を繰り返す」問題が起きるのか?
医療現場の高ストレス環境が背景にある
医師・看護師は、他職種と比べても労働強度が高く、責任の重い業務に日々晒されています。
夜勤や長時間労働、急患・急変への即時対応などが常態化しており、心身への負担は非常に大きく、メンタル不調に陥りやすい職場環境といえます。
特に中堅職員はマネジメント業務も担っており、負荷が増す一方で相談できる相手がいないという孤立感も問題となっています。
復職後の職場配慮不足が再休職を招く
休職明けの職員に対して適切な復職支援策が取られていないと、再度のメンタル不調につながります。
業務量が急に元に戻ったり、休職前の人間関係が改善されていなかったりすると、せっかくの復帰が長続きせず、再度休職に至ることが少なくありません。
こうしたリスクを見越し、復職時の「リハビリ勤務」や業務内容の調整を制度として設けておくことが重要です。
医療法人として最初に整備すべき制度と対応
就業規則における「休職・復職」の定義と手続を明記
対応の第一歩は、就業規則の整備です。「休職」の定義、「復職」の条件、「治癒」の基準を明確に文書化することで、後のトラブルを防ぎます。
たとえば「業務外傷病により通常の労務提供が困難であり、回復に相当の期間を要する場合」などの文言を入れることで、適正なタイミングで休職命令を出すことができます。
また、主治医の診断書だけで復職を許可するのではなく、法人側の指定医の意見を反映させたり、複数の医師の判断を求める規定を設けることも有効です。
復職後も「リハビリ勤務期間」や「定期面談」の制度を併設することで、職場としてのサポート体制を構築できます。
復職・再休職を繰り返す職員への「通算規定」
メンタル不調の場合、病名が異なっていても実質的に同一の原因で休職を繰り返すケースがあります。
就業規則上、「休職期間を通算する」旨の条文を入れておくことで、無限に休職を認めざるを得なくなる事態を防げます。明確な通算規定があれば、一定期間の休職後に「自然退職」とする仕組みも導入可能となり、組織の健全な人員配置が実現します。
人事判断として「退職」や「解雇」に進む際の留意点
業務起因か私傷病かを明確に区別する
労働基準法第19条では「業務上の傷病による休職中の解雇」を原則禁止しています。
そのため、メンタル不調が業務起因であるとされる場合、法人側は安易に退職や解雇に進むことができません。ハラスメントや過重労働が背景にあると主張された場合には、労災認定の争いに発展することもあるため、業務との因果関係については弁護士と連携して慎重に整理する必要があります。
解雇リスクを回避するための「自然退職」制度
一定の期間を経ても復職できない場合、法人としては「自然退職(期間満了退職)」とする規定を設けておくことが重要です。
これは、法人側の一方的な意思表示(普通解雇)ではなく、あくまでも制度としての「退職処理」であるため、トラブルに発展する可能性を低くできます。ただし、職員への説明責任は丁寧に果たす必要があり、「規定に基づく処理であること」「十分な猶予期間があったこと」を記録に残しておくべきです。
制度面だけでなく「現場対応」も重要です
復職後のリハビリ勤務・業務軽減の制度設計
復職した職員がすぐにフルタイム・フル業務に戻るのは精神的・身体的に大きな負担です。
そこで、一定期間の「時短勤務」「軽度業務」などを設定し、段階的な職場復帰を可能にすることが望まれます。これにより、再休職のリスクを下げ、定着率も高めることができます。
上司・人事担当者による面談と記録の徹底
メンタル不調の職員とのコミュニケーションは、定期的かつ記録を伴って行うべきです。
「いつ」「どんな状況で」「どんな対応をしたか」を記録しておくことは、後に労使トラブルとなった際に法人を守る証拠となります。また、復職面談においても、法人側の求める業務水準と本人の希望のすり合わせをきちんと実施する必要があります。
法的リスクに備えるには弁護士の関与が不可欠
就業規則の文言ひとつで争点になる時代
近年、労働契約法や労働審判制度の浸透により、就業規則の不備や運用ミスが重大な責任問題につながるリスクが高まっています。
特に、解雇・退職処理に関しては、文言ひとつで無効とされるケースも珍しくありません。就業規則はひな形ではなく、実情に即して弁護士と一緒に見直すことが不可欠です。
第三者視点での対応が、職員との関係悪化を防ぐ
メンタル不調者への対応は非常にセンシティブです。内部の人間のみで対応すると、職員との関係が感情的にこじれるおそれもあります。
そこで、弁護士を交えた中立的な視点での助言や、書面の作成・対応記録の整備を行うことが、職場の秩序と信頼関係を維持するうえで極めて有効です。
まとめ|人材を守り、組織を守る視点で制度と運用を
医療法人にとって、職員はかけがえのない財産です。休職を繰り返す職員に対しても、排除ではなく支援の姿勢を持ちつつ、組織運営として必要な線引きや制度設計を行うことが求められます。
とはいえ、精神疾患やメンタルヘルス対応は法律的にも高度な判断が必要とされる分野です。対応に悩まれる場合は、早期に弁護士へご相談ください。
当事務所では、医療法人に特化した法務サポートを行っており、実情に即した就業規則の見直しから、個別対応の助言まで一貫して対応が可能です。
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