法人破産と個人破産の違いとは?

本記事では、法人破産と個人破産の違いを説明いたします。

破産法に関する基礎知識

破産手続を規律している法律は、破産法です。
そこで、まずは、破産法に関する基礎知識を確認していきましょう。

破産法とは

破産法とは、破産手続における様々な規律を定めている法律です。

例えば、破産手続を利用することができるか(破産手続開始要件)や、破産管財人の権利義務、破産手続の流れなどが定められています。

破産手続を利用するには、破産法の理解が不可欠といえるでしょう。

破産法で定義している目的

多くの法律は、その法律が制定された目的を第1条に規定しています。破産法も例外ではありません。

破産法第1条は、「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」と定めています。

債務者、すなわち破産をしようとする者の財産等の「適正かつ公平な清算」を念頭に置きつつ、当該債務者に対して債権を有している者や、当該債務者と契約関係にある者との間で、「権利関係を適切に調整」することで、「適正かつ公平な清算」を達成することを目的としています。

この目的に沿って、様々な規律が定められています。

法人破産と個人破産の違いとは?項目別に解説

破産法において、法人破産の個人破産とは区別して考えられています。主な相違点を説明します。

財産・資産の処分

破産者が破産手続開始時に有する一切の財産は、原則として破産財団を構成します(破産法34条1項)。破産財団に属する財産の管理は、破産管財人が行うこととなります(破産法79条)。破産財団は破産管財人によって換価され、破産債権者に配当されます(破産法195条等)。

そのため、法人破産の場合、法人が有していた一切の財産は、破産財団として破産管財人に管理され、換価されることとなります。法人の場合、破産手続後に消滅するため、経済生活の再生を図る必要がないためです。

一方、個人破産の場合、破産手続終了後も生活は継続していくため、経済生活の再生を図る必要があります。そのため、99万円までの現金(破産法34条3項1号、民事執行法131条3号)及び差押禁止財産(破産法34条3項2号)は、自由財産となり、破産財団を構成しません。すなわち、破産債権者への配当に引き当てられることはなく、破産債務者が手元に残しておくことができます。さらに、破産手続開始決定の確定日から1か月間、破産債務者は自由財産の拡張の申立てをすることができ、これが認められれば、さらに財産を手元に残すことができます。

免責手続

免責(破産法248条以下)とは、「経済生活の再生の機会の確保を図る」(破産法1条)という目的のもと、破産手続内での換価配当処分の終了後、なお残存する債務について、その責任を免除する制度です。

免責制度は、経済生活の再生という目的があるため、個人債務者にしか認められていません。個人破産においては、この免責許可を得られないのであれば、破産手続を選択する実益は乏しいとも考えられています。

破産規模

破産手続は、原則として、破産者の全ての財産を換価する手続です。そのため、事業活動の有無やその程度によって、経済的活動の範囲が異なり、処分するべき財産の有無や程度も異なってくることとなります。

一般的には、法人の方が個人よりも経済的活動の規模が大きいため、必然的に法人破産の方が、利害関係者や財産が多く、破産規模は大きくなります。

個人破産でも、個人事業主の破産とそうでない方の破産では、前者の方が、事業に伴う利害関係者や資産があることになるため、破産規模は大きくなります。

破産を検討する際に専門家への相談が必要な理由

破産手続に当たって、法律上、弁護士等の専門家に相談・依頼しなければならないわけではありません。しかし、破産を検討する際には、一度弁護士への相談をすることをお勧めします。

破産手続によって大きく生活に影響する

破産手続は、短期間で終わるものではありません。日常生活を送りながら、破産手続きの開始を求める申し立てをすることや、破産手続のために裁判所や破産管財人とやり取りをすることは心身の負担が非常に大きいと思われます。

弁護士に依頼すれば、そうした煩雑な手続を代理して行うことができます。

事業状況を考慮して事業継続の選択可能性が出てくる

破産手続を選択してしまうと、事業資産や既存の契約関係をすべて処分しなければならないため、同じ事業を再開することは極めて困難で、事実上事業の継続は諦めざるを得ないこととなります。

破産手続は債務整理の方法の一つでしかありません。しかし、任意整理や民事再生など、他の債務整理の手段はあります。

弁護士などの法律の専門家であれば、今の事業状況で破産手続を選択する必要があるのかの見極めをすることができます。

 破産法を理解した上のアドバイスが可能

最初に紹介したように、破産手続は破産法に基づいて行われます。そのため、破産法の理解は必須です。

弁護士であれば、破産法を十分に理解しており、裁判所の運用などにも精通しています。そのうえで、生活や事業の状況を把握したうえで、適切なアドバイスをすることができます。

法人破産に関するご相談は弁護士へ

以上、法人破産と個人破産の違いを説明してまいりました。法人破産は、代表者の個人破産を伴うことも多く、個人破産よりも煩雑な手続といえます。

当事務所は、複数の弁護士が所属しているうえ、破産手続に関して豊富な知識と経験を持っています。法人破産を検討されている経営者の方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。

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