不動産業・建設業に強い弁護士が規制やトラブルを徹底解説

不動産を営む上で、様々な法的規制や取引相手との関係で法的トラブルが発生することがあります。そこで、以下では、不動産を営む方々が知っておくべき建築規制とトラブルについてご説明させて頂きます。

不動産業における発生しやすいトラブル

不動産業において発生しやすいトラブルについてご説明させて頂きます。

債権回収・立ち退きに関するトラブル

まず、債権回収や立ち退きの際に法的トラブルが発生することがあります。

債権回収というのは、相手に対して金銭を支払ってもらう権利があるにもかかわらず、相手が金銭を支払ってくれない場合に金銭を回収する手段をいいます。例えば、売買契約を締結し、建物を引き渡したにもかかわらず、一切売買代金を支払ってもらえないケースや賃貸借契約を締結し、建物を貸しているにもかかわらず、家賃を滞納しているケースなどが想定されます。このようなケースに備えて検討しておくべきことは担保を立てるということです。担保には人的担保と物的担保があります。

人的担保

不動産業界の人的担保の代表例は、保証人です。もし、取引する相手に金銭を支払う能力があるかどうか不安がある場合には、保証人を複数人立てさせることにより保証人から金銭を支払うことを確保することができます。しかし、たくさん保証人を立てたとしてもその保証人のいずれもが金銭を支払う能力がなければ保証人の数が多くても無意味である点には、注意が必要です。

物的担保

人的担保と比べて金銭回収の確実性があるのが物的担保となります。不動産業界の物的担保の代表例は、抵当権です。抵当権というのは、金銭の貸す際に不動産に設定するものです。そして、抵当権を設定しておけば、返済が滞った場合、不動産を売却して売却代金から返済すべき金銭を回収できます。例えば、住宅ローンを組む場合に、ローンを月払いとする代わりに住宅に対して抵当権を設定するとします。そして、ローンが支払えなくなった場合に抵当権を実行します。抵当権を実行すると、住宅を競売にかける手続きを取ることができ、競売によって得られた代金を返済してもらえていないローンに充てることができます。抵当権のような物的担保は物の交換価値までは債権回収で確保することができるので、人的担保よりは金銭回収の確実性が上がります。もっとも、物的担保は原則として登記などで世間一般に公示する必要があり、かつ強制的に金銭を回収する強制執行において差押えや競売という法的手続が要求される点で煩雑であるところが、人的担保と比べてデメリットとなります。

立ち退き

不動産の賃貸借契約を締結し、借主が賃料を長期間滞納している場合や不動産の売買契約を締結しても、支払期限を過ぎても買主が代金を支払わない場合、不動産の占有している者をどのように立ち退かせるべきかが問題となります。債権回収とは異なり、不動産自体を自己の占有に戻すのが、立ち退きの目的です。例えば、賃料を滞納している借主を建物から立ち退かせたい場合には、建物明渡請求訴訟を提起することが考えられます。ここで、一つ注意しておきたいことは、催告と解除通知が必要な点です。まず、借主に対して相当の期間を定めてその期間内に滞納している賃料を支払うように借主に対して催告します。そして、支払いがなければ賃貸借契約を解除する旨の内容の通知をしておきます。このような手続が必要なのは、借主が建物を明け渡す義務は賃貸借契約が解除することによって生じるからです。後に、催告と解除通知があったかどうかについて争いが生じることがあります。そのため、内容証明郵便で催告と解除通知を行なっておいた方がいいです。

建物明渡訴訟を提起し、判決が言い渡され、判決が確定した場合、判決で確定した権利は強制執行手続を行うことができます。もし、建物明渡請求の判決において貸主が借主を立ち退かせる権利が確定しても、借主が応じない場合にはさらに強制執行の申立てを行うことになります。なお、訴訟の途中において当事者間で話し合い、和解という解決をすることも可能です。

建築規制トラブル

不動産において建物を建築する場合、様々な規制があります。そのため、建築に関する取引を成立させた後、いざ建築に着工したときに建築することができないことが発覚し、契約内容を実現で着ないことになる可能性があります。そのため、不動産取引において建築規制についての知識が重要となります。

建築規制における建築基準法とは

建築規制においてよく出てくる法律は建築基準法です。建物は、他人の建物と隣接して地域環境の一要素となり、用途によっては不特定多数の人が利用する公的な側面があります。そのため、建築基準法は公的な側面を考慮し、社会全体の利益を損なうことがないように建物の敷地・構造・設備・用途などについて必要最低限守ることが必要な基準を定めています。そこで、建築基準法においてどのような規制があるかについて説明させて頂きます。

接道義務

ほとんどの家の敷地は道路に面しています。これは、接道義務が建築基準法43条に定められているからです。原則として建築物の敷地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接しなければなりません。もっとも、地方自治体は条例によって接道義務について制限を加えることができます。そのため、接道義務の具体的な内容については建築の際に地方自治体の条例を確認しておくことが必要となります。

建ぺい率・容積率について

都市計画法により、市街化区域内の土地は、12の用途地域に分けられています。建築基準法は用途地域ごとに建ぺい率と容積率を定めて建築の規模を制限し、敷地に一定割合の空地を確保することで周辺の安全を守ろうとしています。具体例としては、延焼危険を防止することが挙げられます。なお、市街化区域かどうかについては地方自治体の都市計画課などに備え付けられている都市計画図で確認できます。

建ぺい率とは、敷地面積に対する建物の建築面積の割合のことです。建ぺい率が大きければ大きいほど建物用に利用できる面積が大きくなります。具体例としては、敷地面積が200平方メートルの土地で建ぺい率が60パーセントだと、120平方メートルの敷地を利用して建物を建築できますが、建ぺい率が40パーセントだと80平方メートルの敷地しか利用できません。建ぺい率の制限は用途地域ごとにいくつかの割合が定められており、その中から都市計画によって最高限度が決定されます。

容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のことです。容積率も大きければ大きいほど、建設できる建物の延べ床面積が広くなります。この容積率の制限についても用途地域ごとにいくつか割合が定められており、その中から都市計画によって最高限度が決定されます。

斜線制限

斜線制限というものがあります。1道路斜線、2隣地斜線制限、3北側斜線制限の3つがあります。

道路斜線制限とは、光や風通しを確保するために道路上空の建築可能部分を制限するものです。なお、道路斜線制限には一定の条件における緩和措置や特例が設けられているため、建物を建てる場合には事前に地方自治体で調べる必要があります。

隣地斜線制限とは、風通しや日光を確保するために隣地間で近接した建物の高さを制限するものです。この制限は第1種低層住居専用地域及び第2種低層住居専用地域を除いた用途地域で適用されます。この制限は、用途地域によって大きく異なるため、建物を立てる前に建築場所がどのような用途地域となっているかについて確認しておくことが大切です。

北側斜線制限とは、北側にある隣地の日光を確保するため、建物の高さを制限するものです。この制限が適用されるのは低層住居専用地域及び中高層住居専用地域となります。

日影規制

日影規制とは、中高層の建物により日影が生じる時間を制限し、周囲の建物について一定の日照時間を確保するための規制です。建物周辺に生じる日影を規制することで、間接的に建物の形を制限しています。日影規制は全国一律の規制ではなく、地域ごとの気候等を考慮して地方自治体が条例で日影時間を指定します。

建築関連法の違反をした場合のリスク

建築規制に関する法律に違反した場合のリスクについて説明させて頂きます。

行政機関への対応が必要になる

建築規制に関する法律に違反した建築物のことを違反建築物といいます。違反建築物の所有者・管理者は行政機関から違法な状態から適法な状態にするように求める命令をします。このような命令を是正命令といいます。もし、是正命令に所有者・管理者が応じなければ行政機関自らが適法な状態にすることがあります。例えば、建物の一部を取り壊すよう是正命令が出ているのに所有者が従わない場合、行政機関が自ら建物の一部を取り壊します。もっとも、どんな是正命令であっても行政機関が自ら動くわけではありません。軽微な違反については、行政が自ら動くことはあまりありません。

罰則が設けられる

建築基準法98条第1項第4号又は第5号、第99条第15号又は16号は建築物の所有者、管理者又は占有者に懲役や罰金刑を適用することが明記されています。そのため、建築基準法について詳しくなくてもこれらの条文が適用されることにより建物の持主などに刑罰が課されてしまう可能性があります。

不動産業における規制トラブルの予防に向けて弁護士にご相談ください

不動産取引を成立させる際には、多くの法律知識が必要となります。また、不動産取引の成立に関連した建物の建設等についても様々な法令の知識を知らなければ取引を実現できなかったり、刑罰を課されてしまったりします。そのようなトラブルに巻き込まれないために是非一度法律の専門家である弁護士にご相談ください。

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