産業廃棄物業界に関連する法令解説②循環型社会形成推進基本法

産業廃棄物業界に関連する法令は、数多く存在します。

そのうち廃棄物処理法や環境基本法と並んで忘れてはならない法律が「循環型社会形成推進基本法」です。

循環型社会形成推進基本法は「3R」を推進するための基本的な方針を定めた法律にあたります。同時に、廃棄物処理法の上位に位置づけられる法律でもあり、産業廃棄物業界にとって重要です。

とはいえ、法律の内容を理解している方は多くないかもしれません。

そこで本記事では、

  • 循環型社会形成推進基本法の位置づけ・制定経緯
  • 循環型社会形成推進基本法の目的
  • 産業廃棄物業界においておさえておくべきポイント

などについて解説しています。

最後まで目を通せば、循環型社会形成推進基本法に関して産業廃棄物業界の方が知っておくべきポイントがわかります。産業廃棄物業に携わる経営者、従業員の方はぜひお読みください。

循環型社会形成推進基本法の基礎知識

循環型社会形成推進基本法は、日常業務では直接の馴染みがない法律かもしれません。

ここでは循環型社会形成推進基本法の位置づけ、制定経緯、目的などの基礎知識を解説します。

循環型社会形成推進基本法とは

循環型社会形成推進基本法の位置づけ、制定経緯は以下の通りです。

循環型社会についての基本理念を示した法律

循環型社会形成推進基本法とは、その名の通り「循環型社会」の推進のための基本的な理念を示した法律です。

一般的に「基本法」は、特定の分野に関する国の基本的な政策の方向性を示す法律です。

環境分野においては、基本法として「環境基本法」が存在しています。循環型社会形成推進基本法は、環境分野のうち循環型社会について詳しく定めた基本法です。環境基本法との関係では下位の法律に該当します。

その反面、「基本法」として、廃棄物処理法や資源有効利用促進法といった「個別法」との関係では上位に位置づけられます。個別法は、具体的な義務について定めた法律であるとご理解ください。

廃棄物処理法は廃棄物の適正処理について定めており、資源有効利用促進法はリサイクルの推進について定めています。このほかにも、以下の各種リサイクル法が制定されており、すべて循環型社会形成推進基本法の個別法にあたります。

  • 建設リサイクル法
  • 食品リサイクル法
  • 自動車リサイクル法
  • 容器包装リサイクル法
  • 家電リサイクル法
  • 小型家電リサイクル法

ほかに、プラスチック資源循環促進法やグリーン購入法も、循環型社会形成推進基本法を具体化した個別法です。

循環型社会形成推進基本法の制定経緯

これまで我が国は「大量生産・大量消費・大量廃棄」の非循環型社会でした。廃棄物の適正処理にいくら目を配ったとしても、そもそも廃棄物が多ければ環境への負荷は大きいままです。そこで、循環型社会の実現が必要とされました。

各種リサイクル法の制定や廃棄物処理法の改正と並行して、循環型社会形成推進基本法の立法が進められ、2000年から施行されています。

循環型社会形成推進基本法の目的

循環型社会形成推進基本法の目的は1条に記載されています。

 

循環型社会形成推進基本法1条

この法律は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)の基本理念にのっとり、循環型社会の形成について、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、循環型社会形成推進基本計画の策定その他循環型社会の形成に関する施策の基本となる事項を定めることにより、循環型社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

 

目的としては「循環型社会の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること」とされています。

そのために、

  • 循環型社会の形成について基本原則を定める
  • 国、地方公共団体、事業者、国民の責務を明らかにする
  • 循環型社会形成推進基本計画を策定する

ことが掲げられています。

循環型社会の定義

循環型社会の定義は2条1項で以下の通り示されています。

「製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分……が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」

定義の背景にあるのが「3R」の考え方です。

3Rは

  • Reduce(発生抑制)
  • Reuse(再使用)
  • Recycle(再生利用)

の頭文字をとった言葉です。

3Rのうちリサイクルはエネルギー効率が悪い場合もあることから、そもそも廃棄物の発生量を減らしたり、廃棄しないで再使用したりするのが重要と考えられています。循環型社会の定義も3Rを反映しているといえるでしょう。

産業廃棄物業界においておさえておくべき法令のポイント

循環型社会形成推進基本法の内容のうち、産業廃棄物業界に携わる方が知っておくべきポイントをまとめました。

廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけた

廃棄物処理法において「廃棄物」とは、無価値の物と考えられてきました。これに対して循環型社会形成推進基本法では、廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけています(2条3項)。

ここから、廃棄物を「無価値で処分すべきもの」と決めつけるのではなく、「価値があるものは利用すべき」とする考えが伺えます。たとえば、排泄物や生ゴミを農業用の肥料や家畜のエサに利用するのは「循環資源」の利用の一環といえるでしょう。

産業廃棄物業界においても、廃棄物をただ処分するだけでなく、循環資源になり得ないか検討する視点は有用と考えられます。

処理の優先順位を定めた

循環型社会形成推進基本法では、処理の優先順位について以下の通り定められました。

①発生抑制(リデュース)

②再使用(リユース)

③再生利用(リサイクル)

④熱回収(サーマルリサイクル)

⑤適正処分

ここにも「3R」の考えが現れており、とりわけ発生抑制(リデュース)や再使用(リユース)が重視されています。

事業者の責務を示した

循環型社会形成推進基本法11条に、循環型社会実現のために事業者が果たすべき責務が示されました。

  • 原材料等が循環資源になった場合に適正な循環的利用を行い、循環的利用ができない循環資源を自らの責任で適正に処分する(排出者責任)
  • 生産者は、設計の工夫、材質や成分の表示、引取りなどにより、製品の廃棄後も適正利用できるように責任を持つ(拡大生産者責任)
  • 国・地方公共団体の施策に協力する

これらの責務は具体的義務を定めたものではなく、個別法によって具体的な義務が課される形になります。

産業廃棄物業界における法的トラブルは弁護士にご相談ください

ここまで、循環型社会形成推進基本法について、位置づけ・制定経緯、目的、産業廃棄物事業者が把握しておくべきポイントなどを解説してきました。

循環型社会形成推進基本法は具体的な義務を定めた法律ではないため、詳しい内容を把握していない方もいらっしゃるでしょう。しかし、産業廃棄物業界は循環型社会の実現に深い関係を有するため、中心的な内容はおさえておくのが望ましいです。

循環型社会形成推進基本法のほかにも、廃棄物処理法をはじめとして産業廃棄物業界に関係する法令は数多くあります。法令違反により行政処分を受けたケースを耳にした方もいらっしゃるでしょう。リスクを避けつつ事業を進めるためには、弁護士への相談が有効な手段です。

当事務所では、これまで産業廃棄物業界の法律問題を数多く取り扱ってきました。業界特有の事情を理解した上で、誠心誠意対応いたします。お困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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