産業廃棄物業界に関連する法令解説③廃棄物処理法

産業廃棄物業界に関係する法令は数多くありますが、実務上特に重要なのが廃棄物処理法です。

廃棄物処理法は、産業廃棄物の定義、処理・保管の方法、マニフェスト制度などについて規定しています。違反すると罰則もあり、産業廃棄物業に携わる方が必ず知っておくべき法律のひとつです。

本記事では、

  • 廃棄物処理法の沿革
  • 廃棄物処理法の目的
  • 産業廃棄物業者がおさえておくべきポイント

などについて解説しています。

産業廃棄物業に携わる経営者、従業員の方はぜひ最後までお読みください。

廃棄物処理法の基礎知識

まずは、沿革や目的など、廃棄物処理法に関する基礎知識を解説します。

廃棄物処理法とは

廃棄物処理法は、正式名称を「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といいます。

従来、廃棄物の処理について規定していたのは「清掃法」という法律です。しかし、経済発展に伴って産業廃棄物の量が増加し、清掃法では十分に対応しきれなくなりました。そこで、1970年に清掃法を全面的に改正して廃棄物処理法が制定されました。

制定後も、不法投棄の深刻化などにより、廃棄物処理法は頻繁に改正されています。

主要な改正と内容は以下の通りです。

改正年 主な改正内容
1991年 マニフェスト制度の導入(特別管理産業廃棄物が対象)
1997年 マニフェスト制度の拡大(すべての産業廃棄物が対象に)

電子マニフェスト制度の導入

2000年 排出事業者責任の拡大(最終処分まで確認義務)
2003年 不法投棄の罰則強化
2005年 収集運搬・処分事業者のマニフェスト保存義務
2010年 排出事業者の責任強化

優良処理業者への優遇措置(許可更新期間の特例創設など)

2017年 電子マニフェストの一部義務化

廃棄物処理法の目的

廃棄物処理法の目的は1条に記載されています。

 

廃棄物処理法1条

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

 

条文によると、廃棄物処理法の目的は「生活環境の保全」と「公衆衛生の向上」です。

そのために、

①廃棄物の排出を抑制する

②廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をする

③生活環境を清潔にする

こととされています。

目的達成のために、廃棄物処理法では排出事業者・処理事業者のいずれに対しても多岐にわたるルールが定められています。

産業廃棄物業界においておさえておくべき法令のポイント

廃棄物処理法について、産業廃棄物業界の方がまず知っておくべき基本的なポイントは以下の通りです。

廃棄物の定義・分類

「廃棄物」と聞くと、一般的には「ごみ」とイメージされるでしょう。

廃棄物処理法では、「廃棄物」は「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」と定義されています(2条1項)。

廃棄物は「不要物」なので、価値があり、対価を得て譲渡されるものは廃棄物にはあたりません。もっとも、「価値がある」と言い張って廃棄物処理法の規制を逃れようとする事業者も存在します。そこで、廃棄物にあたるかは、物の性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思を総合的に考慮して判断するべきとされています。

 

廃棄物のおおまかな分類は以下の通りです。

まず「産業廃棄物」とは、次のものを指します(2条4項)。

  • 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥など法令で定められた20種類
  • 輸入された廃棄物

産業廃棄物に該当するものについては、排出事業者に処理責任があります。実際には、産業廃棄物処理業者に委託するケースがほとんどです。

産業廃棄物の中でも「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」については「特別管理産業廃棄物」にあたります(2条5項)。廃油、廃PCB、アスベストなどが特別管理産業廃棄物の例です。特別管理産業廃棄物については、より厳格な管理が求められます。

 

そして、産業廃棄物に該当しない廃棄物は、すべて「一般廃棄物」に分類されます(2条2項)。家庭ゴミは典型的な一般廃棄物です。一般廃棄物の中でも特に危険なものについては「特別管理一般廃棄物」とされています(2条3項)。

一般廃棄物は、基本的に市町村が処理責任を持ちます。

ただし、事業により生じた一般廃棄物(「事業系一般廃棄物」)については、排出事業者が自らの責任で処理しなければなりません。オフィスから出る紙ゴミ、飲食店から出る残飯などが該当します。

廃棄物の定義・分類は基礎知識であり、頭に入れておく必要があります。

マニフェスト制度について

マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、産業廃棄物の排出事業者が処理業者に委託する際に発行する複写式の伝票をいいます。排出事業者が産業廃棄物の処理の流れを確認し、不法投棄を防ぐことがマニフェストの目的です。

マニフェストには、排出事業者、処理事業者、産業廃棄物の種類・数量などの必要事項を記載します。

排出事業者は、産業廃棄物の収集・運搬・処分を委託する際にマニフェストを交付します。その後処理が終わった段階で処理業者からマニフェストを受け取り、委託した通りに処理が完了したかを確認なければなりません。

委託を受けた処理業者においては、以下の点に注意してください。

  • 適正に処理をしたうえでマニフェストを排出事業者に返送する
  • 処理状況を正確に記載した帳簿を作成・保存する
  • マニフェストを受け取っていない状態で産業廃棄物を引き受けない

 

なお、近年は電子マニフェストが普及しています。オンラインで完結し、受け渡しの手間や紛失リスクがない点がメリットです。

2017年の廃棄物処理法改正により、電子マニフェストが一部義務化されています。義務化の対象は「前々年度に」「特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)を」「年間50トン以上」

排出させた事業場が、特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合です。

処理基準

処理を受託した事業者は、処理基準を遵守しなければなりません。

様々な基準が定められていますが、収集運搬について例えば以下のルールがあります(廃棄物処理法施行令6条1項1号)。

  • 廃棄物の飛散・流出を防止する
  • 悪臭・騒音・振動を防止する
  • 運搬車の外側に所定の事項を表示する
  • 運搬車に所定の内容を記載した書面を備え付けておく
  • 積替えの際には周囲に囲いがあり、積替え場所であることが示された場所でする

上記は基準のほんの一部です。事業者は、処理内容に応じた基準を理解しておく必要があります。

産業廃棄物業界における法的トラブルは弁護士にご相談ください

ここまで、廃棄物処理法について、沿革、目的、産業廃棄物事業者が把握しておくべきポイントなどを解説してきました。

廃棄物処理法は、産業廃棄物業界に携わる方が必ず知っておくべき法律です。とはいえ、内容は複雑であり、正確に理解するのは簡単ではないでしょう。ご紹介した内容も一部にすぎません。加えて、改正も頻繁になされるため、常に情報をアップデートしておく必要があります。

残念ながら、廃棄物処理法違反により、行政処分や罰則を受けてしまう事業者も存在します。最新法令を知り、違法とならずに事業を進めるためには、弁護士への相談が有効な手段です。

廃棄物処理法はもちろん、各種法的問題にお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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