企業が知っておくべき労働審判時の答弁書の書き方のポイント

企業が(元)従業員から労働審判を申立てられた場合には、期限までに「答弁書」を提出しなければなりません。

労働審判は短期間での解決を目指す手続きであるため、裁判所に与える第一印象が非常に重要になります。会社側の主張を適切にまとめた答弁書を作成して提出することは、労働審判を有利な形で決着させるためには不可欠です。

本記事では、労働審判に関する基礎知識や答弁書の記載内容・ポイントなどを解説しています。

答弁書提出までの時間は限られています。本記事を読んですぐに作成に取りかかりましょう。

労働審判に関する基礎知識

まずは、そもそも労働審判とはどういった手続きかをご紹介します。

労働審判とは

労働審判とは、労使間で生じた労働関係のトラブルを、裁判所で早期に解決するための手続きです。

通常の訴訟には回数制限がありませんが、労働審判は原則として3回以内の期日で終結するとされています(労働審判法15条2項)。1ヶ月に1回のペースで開かれたとして、3ヶ月程度で終結する計算になります。

労働審判の結論には判決と同様の効力があるため、トラブルの最終的な解決が可能です。

近年は年間3000件以上利用されており、残業代、退職金、解雇、セクハラ、パワハラといったトラブルを裁判所で迅速に解決するための専門手続きとして有用なものといえます。

労働審判の大まかな流れ

従業員から申立てがあった場合、労働審判はおおむね以下の流れで進行します。

 

  • 第1回期日の指定、呼出し

申立てがあると、裁判所から申立書や第1回期日を記載した呼出状などが郵送されます。申立書には労働者の求める結論や主張などが記載されているので、よく目を通してください。第1回の期日は原則として申立てから40日以内に指定するとされています(労働審判規則13条)。

 

  • 答弁書の提出

裁判所からの書類には、答弁書の提出期限が記載されています。期限は第1回期日の1週間から10日前頃に設定されるのが一般的です。会社は期限内に答弁書を作成し、提出しなければなりません。答弁書については後ほど詳しく解説します。

 

  • 第1回期日

第1回期日では、まず申立書や答弁書の内容を元に、当事者双方に裁判所から事情聴取がなされます。

その後、裁判所が双方の意見を別々に聞いて妥協点を探ります。ここで合意できれば調停成立です。合意内容は訴訟での判決と同様の効力を有します。第1回で調停が成立して手続きが終了するケースも珍しくありません。

 

  • 第2回・第3回期日

第1回でまとまらなかった場合には、第2回期日が指定され、第1回と同様に調停成立を目指します。第2回でまとまらなかった場合には、第3回に続きます。

 

  • 審判の告知

労働審判の手続きは原則として3回までとされており、第3回までで調停が成立しなければ、裁判所が妥当と考える結論が審判として告知されます。審判とは訴訟でいう判決のようなものです。

審判を双方が受け入れた場合には、この時点で手続きは終わります。審判の内容に納得がいかない場合には、異議申立てをして通常の訴訟で争うことも可能です。

なお、証拠が多いなど事案が複雑なケースでは、労働審判での手続きに適さないとして審判を出さずに強制的に終了し、通常の訴訟に移行する可能性もあります(労働審判法24条)。

労働審判における答弁書の重要性

労働審判において、会社が事前に提出する答弁書は結論を左右する重要な書類といえます。原則として3回以内の期日で決着をつけるため、裁判所が抱いた第一印象を後から覆すのは困難です。「会社の主張が正しそうだ」と裁判所に思ってもらえるように、説得力のある答弁書を提出する必要があります。

労働審判手続きの答弁書とは

労働審判における答弁書とは、ひとことでいえば「トラブルに関する会社の主張をまとめた書面」です。従業員が提出した申立書に記載されている事実や主張について、反論などを通じて会社としての立場を示します。

答弁書の内容が優れていて裁判官や労働審判員にうまく会社の主張が伝われば、労働審判を有利に進められます。

答弁書の提出の必要性

答弁書は裁判所が指定した期限までに必ず提出してください。

提出が遅れれば、裁判官や労働審判員が内容をチェックする時間を確保できず、会社の主張を理解しない状態で期日を迎えるリスクがあります。ましてや、一切無視して提出しないのは絶対にいけません。

一般的には、提出期限は第1回期日の1週間から10日前に指定されます。第1回期日は原則として申立てから40日以内にあるため、郵送にかかる期間も考えると、会社が申立てを知ってから提出期限までは1ヶ月弱しかありません。申立てを知ったらすぐに作成に着手してください。

労働審判の答弁書の記載内容とポイント

答弁書に記載すべき内容とポイントを解説します。

なお、東京地方裁判所のサイトにひな形と記載例が掲載されています。同時に開きながら以下の文章をお読みいただければ、よりイメージがしやすいでしょう。

立ての趣旨に対する答弁

まずは、申立ての趣旨に対する答弁を記載します。

「申立ての趣旨」とは、労働者が求める結論を端的に示したものです。労働トラブルでは、労働契約上の権利を有する地位(従業員であること)の確認や、金銭の支払いを求める内容などが考えられます。

会社として争いたい場合には「本件申立てにかかる請求をいずれも棄却する」などと記載するのが一般的です。

申立書に記載された事実に関する認否

次に、申立書に記載された事実に関する認否を記載します。

申立書には、請求の直接の根拠となる事実や、関連する事実が記載されています。答弁書では、これらの事実について、認否(認めるか否か)を事実ごとに示さなければなりません。

認否には3つのパターンがあり、それぞれ以下の意味があります。

認否のパターン 認否が持つ意味
認める 双方に争いがない事実として扱われます。
否認する 争いがある事実として扱われます。
不知(知らない) 否認と同様に、争いがある事実として扱われます。

なお、事実ではなく法的な評価(「解雇は無効である」など)について争う際には「争う」と記載するのが一般的です。

認否を示す目的は、争いがある事実とない事実とを明確に分け、争いがある点に絞って効率的に審理を進める点にあります。したがって、いくら労働者が気にいらないからといって「すべて否認する」といった認否にするのは不適切です。争いのない事実は認めるようにしましょう。

もっとも、認めた事実を後から覆すのは困難であるため、ひとつひとつの事実を吟味して認否を記載してください。

答弁を理由づける具体的事実

続いて、答弁を理由づける具体的な事実を記載します。会社の主張を裏付ける事実を記載する項目であるため非常に重要です。事実関係をわかりやすく整理して記載してください。

たとえば「解雇が有効である」と主張するのであれば、解雇の理由となる事実があり、適切な手続きを踏んで解雇したことを示す必要があります。

予想される争点ごとの証拠

予想される争点、関連する重要な事実、争点ごとの証拠を示してください。

これまでの経緯から争いになると考えられる点を列挙し、会社として争点に関して重要と考えている事実を記載する必要があります。

たとえば、残業代が問題になっているケースでは

  • 労働時間についての認識
  • 当該従業員が管理監督者といえるか
  • 固定残業代の有効性

などが争いになりやすいです。

争点についてただ主張するだけでなく、争点に関する証拠を提出し、事実と証拠との関係がわかるように、関連する証拠の番号(乙1、乙2・・・)を記載するなどしてください。

この他に、申立て前になされた当事者間の交渉の経緯なども記載する必要があります。

労働審判手続きに関する相談は弁護士法人西村綜合法律事務所へ

ここまで、労働審判について答弁書を中心に解説してきました。

労働審判の答弁書は重要であるにもかかわらず、会社に与えられた準備期間は非常に短いです。会社の主張をわかりやすくまとめて期限内に提出するのは容易ではありません。

弁護士法人西村綜合法律事務所では、会社側に立って多数の労働審判事件を取り扱ってきました。時間がない中でも、裁判所に主張を理解してもらえるよう全力で対応いたします。

労働審判は時間との勝負です。申立てを受けてお困りの方は、ぜひ当事務所までお早めにご相談ください。

「企業が知っておくべき労働審判時の答弁書の書き方のポイント」の関連記事はこちら

弁護士法人 西村綜合法律事務所の特化サイト