発信者情報開示請求とは?知っておきたい悪質な口コミに対する対処法

悪質な口コミの対処法として発信者情報開示請求という手段があります。そこで、発信者情報開示請求について以下では説明させていただきます。

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは、ブログのような特定電気通信により権利を侵害された者が、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下、「プロバイダ責任制限法」といいます。)5条1項に基づいて一定の要件を満たす場合に電子掲示板やブログの運営者(これらの者を「特定通信役務提供者」といいます。)が保有する発信者情報の開示を請求することをいいます。以下では、発信者情報開示請求について詳しくご説明させていただきます。

削除請求との違い

削除請求は、投稿をサイトから削除することによって、投稿された状態が継続することで生じる損害を防止するものです。発信者情報開示請求は、発信者を特定することによって発信者に対して何らかを法的措置を取ることが可能になるものです。

発信者情報開示請求を検討すべきケース

サイトに書き込みをした者に対して1損害賠償請求を請求したいとき、2謝罪広告等の名誉回復措置の請求をしたいとき、3一般民事上、著作権法上の差止請求をするためであるとき等の場合は、氏名などの情報開示をプロバイダに対して求める必要があります。その際は、発信者情報開示請求を検討すべきです。

発信者情報開示請求を行うための要件

どのような場合に発信者情報開示請求が認められるのかについてご説明させて頂きます。

特定電気通信による情報の流通

まずは、特定電気通信による情報の流通であることが必要です。特定電気通信とは、インターネットでのウェブページや電子掲示板等の不特定の者により受信されることを目的とするような電気通信の送信を意味します。情報の流通とは、情報を送り、伝え、受けることの三面を併せて表現したものを指します。なお、情報の送信とは、情報の流通のうち送ることという一側面を捉えて表現するものです。すなわち、当該情報を作成したこと等が問題とされるのではなく、当該情報を特定電気通信により不特定の者が受信し得る状態に置いたことが問題とされるという意味です。

また、権利の侵害が情報の流通自体によって生じたものである場合を対象としているのです。すなわち、流通している情報を閲読したことにより詐欺の被害に遭った場合等は、通常、情報の流通と権利の侵害との間に因果関係があるものとは考えられないため、この法律の対象とはなりません。

自己の権利侵害

次に、自己の権利が侵害されていることが必要です。権利侵害とは、個人的法益の侵害として、民事上の不法行為等の要件としての権利侵害に該当するものをいいます。侵害されることとなる権利については、著作権、名誉、プライバシー、商標権等様々なものが含まれています。 特定個人の権利のほか、法人の権利も含まれます。

なお、刑法上のわいせつに該当する情報、児童ポルノに該当する情報などは、当該情報の流通により、社会的法益が侵害されることとなりますが、同時に特定個人の権利が侵害されるものでなければ、発信情報開示請求の対象とはなりません。また、暴力的な表現を内容とする情報等の有害ではあるが、法令には違反しないような情報についても、 当該情報の流通によって特定個人の権利が侵害されることとはなりません。そのため、発信者情報開示請求は、認められません。

権利侵害の証拠

権利侵害情報が投稿されているウェブページはウェブサイトの管理者によっていつでも削除される可能性があります。また、被害者からの削除請求が成功した場合にも、ウェブページの内容を確認することは難しくなります。そうなってしまった場合、被害者がウェブページの保存をしていなければ、削除請求後の発信者情報開示請求等の際に、自ら権利侵害を立証することが難しくなるおそれがあります。したがって、被害者は管理者によって投稿が削除されたり、削除請求によって投稿が削除されたりする前にウェブページを保存して証拠化しておく必要があります。ただし、ウェブページを保存したとしてもホスティングプロバイダ等が保有する発信者情報が保全されるわけではありません。

ウェブページを証拠として保存する際には、1ウェブページのURLが特定されていること、2ウェブページに投稿された内容が確認できることのが明確になるような方法で保存することが重要です。なぜなら、ウェブページを保存する目的は、後日の法的手続によって特定のウェブページにおいて自らの権利が侵害されていたことを立証することにあるからです。

保存の方法としては紙に印刷する、PDFファイルとして保存する、スクリーンショットで画像として保存しておくことが考えられます。

紙に印刷する方法としては、まずウェブブラウザに表示されている問題となっているウェブページをプリンタで印刷する方法があります。裁判等においては、印刷された紙を証拠として提出します。カミに印刷する場合には、ウェブページのURLが全て印刷されない場合があります。その場合、プリンターの設定を変更して、URLが全て表示されるよう調整しなければなりません。

PDFに保存する方法の場合にもPDFファイルにURLが全て表示されているか確認することが必要になります。

スクリーンショットで画像として保存する方法の際には、ウェブブラウザに表示されている画面を画像として保存することもできます。この場合にも、URLが全て表示されているかを確認する必要があります。

開示を受けるべき正当な理由

さらに、発信者情報開示請求が認められるためには、請求者に開示を受けるべき正当な理由があることが必要です。この要件は、開示請求者が発信者の情報を入手することに合理的な必要性があるかどうかを判断するための要件です。この要件では、発信者のプライバシー等を考慮することになります。例えば、賠償金が支払い済みで損害賠償請求権が消滅して不法行為の要件を明らかに満たさず、損害賠償請求が認められない場合は、開示請求者に発信者情報の開示を受ける利益がないことになります。そのため、入手することに合理的な必要がないことになり、発信者情報開示請求は認められないことになります。

「発信者情報」に該当

発信者の情報は、プライバシーや匿名表現の自由、通信の秘密に関わるものであり、不当に拡大すれば発信者の権利・利益が不当に侵害されるおそれがあるため、開示対象となる情報は限定されています。

開示される発信者情報としては、1 発信者の氏名・名称、2 発信者等の住所、3 発信者の電子メールアドレス、4 侵害情報に係るIPアドレス、ポート番号、5 侵害情報に係る携帯電話端末・PHS端末からのインターネット接続サービス利用者識別符号、6 侵害情報に係るSIMカード識別番号、7 456の端末等から開示関係役務提供者の用いる設備に侵害情報が送信された年月日・時期となります。

発信者情報開示請求を行うための流れ

発信者情報開示請求を行うための流れを説明させて頂きます。

誹謗中傷の証拠保管

誹謗中傷を理由とした損害賠償請求のために発信者情報開示請求を行うのであれば、不法行為の損害賠償の根拠となる誹謗中傷の証拠を保管します。

サイト運営元にIPアドレスやタイムスタンプの開示請求

従来のやり方を説明します。まず、サイト運営元(コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダ)に対し、発信者情報開示手続請求をテレサ書式による発信者開示情報請求書を送付するか、仮処分の方法によりIPアドレスとタイムスタンプ等の開示を受けます。

発信者のプロバイダを特定

次に、IPアドレスを元にインターネットサービスプロバイダを特定します。

プロバイダに情報開示請求とアクセスログの保存を申請

インターネットプロバイダに情報開示請求とアクセスログの保存を求めることが考えられます。法的手続として発信者情報の消去を禁止する仮処分をすることが考えられます。

プロバイダから発信者の個人情報を開示

インターネットプロバイダに対して発信開示請求を行い、発信者の情報開示を受けます。

このような二段構えを解消するために、新たに非訟手続が創設されました。この非訟手続で発信者情報開示命令の申立て(プロバイダ責任制限法8条)と付随的に提供命令の申立て(同法15条1項、2項)を行うことで、申立人は発信者の情報を入手することができます。

他にも検討できる!悪質な口コミへの対処法

発信情報開示請求以外の悪質な口コミへの対処法をご説明いたします。

削除請求

書き込みの削除は、人格権としての名誉権に基づく妨害排除請求を被保全権利とする仮地位仮処分によって求めることができます(民事保全法23条2項)。サイトの作成者が分かっていて、作成者が削除に応じそうな場合は、作成者を相手方として同仮処分を求めることが考えられます。しかし、サイトの作成者が不明であったり、作成者が分かっていても作成者による削除が期待できなかったりする場合には、サーバーにデータを保管しているプロバイダを相手方に仮処分を申し立てることができます。

損害賠償請求

発信者情報開示請求をしなくても、悪質な口コミを行った者が分かる場合にはその者に対して名誉権侵害等を理由に不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる場合があります。

悪質な口コミは弁護士にご相談ください

悪質な口コミでお困りの方は、法律の専門家である弁護士に是非一度ご相談ください。

 

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