能力の低い社員を配置転換したい!有効なケース、無効になるケースを徹底解説

新卒の社員がいつまで経っても仕事を覚えない(やる気が感じられない)、期待して採用した中途社員の成績が奮わない、企業経営に携わる方であればこのようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は、企業内でのローパフォーマー型問題社員への対応策としての配置転換やその注意点について詳しく解説します。

ローパフォーマー型問題社員とは

ローパフォーマー型問題社員とは、その名の通り「業務の遂行能力が不足している社員」のことを指します。

これには、仕事の質や量が期待に達していない、指示に従えない、または仕事に対する姿勢に問題がある社員が含まれます。

例えば、下記のようなケースが該当するでしょう。

・他の社員と比較して、仕事のスピードがあまりにも遅く、ミスが目立つ
・指示が理解できない(曲解してしまう)
・期限や納期を守ることができない
・言い訳が多く、行動力がまるでない

このタイプの問題社員に対しては、まずは指導や教育を通じて改善を図ることが重要ですが、状況が改善しない場合には、配置転換や解雇などの対応策を検討する必要があります。

能力不足を理由に配置転換しても問題ない?

就業規則等で定められた人事権の範囲内であることが必要

配置転換は、企業の人事権の一環として認められていますが、これは就業規則や労働契約に基づいて行われる必要があります。

企業が人事権を行使する際には、あらかじめ労働者にその権利があることを明示しておくことが重要です。

例えば、就業規則に「業務上の必要に応じて配置転換を行う」と明記されている場合、企業はその範囲内で社員の配置転換を行うことが可能です。

ただし、就業規則に記載がない場合でも配置転換できることもあります。企業や社員の状況によっても変わってくる部分ですので企業側弁護士へ相談し判断を仰ぐことも有効な手段と言えるでしょう。

業務上において必要で、合理性があることが重要

配置転換を命じるためには、業務上の必要性があること、不当な動機目的によるものでないこと、配置転換に合理性があること(労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を課すものではないこと)が必要です。

例えば、特定の部署で業務が滞り、他の部署から人員を補充する必要がある場合や、社員の能力を活かせる部署への配置が合理的である場合などです。企業側が「業務上の必要性」と「合理性」を説明できる状況であれば、配置転換が正当と認められる可能性が高まります。

一般的に正当とされる配置転換の例

(1)人手の足りない部署に余剰人員を集める

企業内で一部の部署が人手不足である一方、他の部署に余剰人員がいる場合、人手不足を補うために配置転換を行うことは、業務上の必要性を説明しやすくなります。

例えば、営業部門で新規プロジェクトが始まり、急遽人手が必要となった際に、他部門から社員を配置転換するケースがこれに当たります。

(2)ジョブローテーションの一環で職種・部門を変える

社員のスキルアップや多様な業務経験を積ませる目的で、ジョブローテーションを行うことも、正当な配置転換の理由とされます。

例えば、総合職採用の社員が複数の部署での業務を経験することを目的に、計画的に配置転換を行う場合などです。このような配置転換は、会社全体の戦略に基づいており、合理的と認められることがあります。

(3)人間関係トラブルへの対処としての配置転換

職場内で人間関係のトラブルが発生し、業務に支障をきたしている場合、その解消を目的に配置転換を行うこともあります。

例えば、部門長からのパワハラによって従業員の業務に支障が出てしまっている場合、部門長を別の部署に移すなどして、職場環境を改善するという方法です。

(4)本人の性格・能力により適した部署への配置転換

社員の性格や能力が現在の部署に適していない場合、本人により適した部署への配置転換も正当とされます。

例えば、顧客対応が苦手な社員を、バックオフィスの業務に配置することで、能力を最大限に発揮させることができます。このような配置転換は、本人にとっても企業にとってもメリットがあると言えるでしょう。

無効になる可能性がある配置転換の例

(1)専門職採用した社員を他の職種に動かす

専門職として採用された社員を、本人の同意なしに全く異なる職種に配置転換することは、無効とされる可能性があります。

例えば、ITエンジニアとして採用されたが実際は技術レベルが低かったり、協調性を著しく欠いてしまっているローパフォーマー型の問題社員を、突然営業職に配置転換するなどのケースです。このような場合、そもそも配転命令権が存在しないと判断されるリスクがあります。

また、キャリアへマイナスの影響等から合理性を欠くとされることもあります。

(2)就業規則や雇用契約で配置転換について定めていない

配置転換が無効とされる主な理由の一つに、就業規則や雇用契約でその可能性が明記されていないことが挙げられます。

労働者にとって配置転換が予見できないものである場合、その実施は法的に正当性を欠くと判断されることがあります。

(3)退職を促す目的がある(嫌がらせ人事)

配置転換が労働者に対する嫌がらせや退職を促す目的で行われた場合、その配置転換は無効とされる可能性があります。

例えば、自宅からの通勤が不可能な遠方の事業所への転勤や、いわゆる追い出し部屋での勤務命令など、実質的に退職を強要する意図がある場合です。

(4)配置転換によって受ける不利益が大きい場合

配置転換によって労働者が著しい不利益を受ける場合、その配置転換は無効とされる可能性があります。

例えば、大幅な給与減額を伴う配置転換や、身体的な事情によって対応しにくい業務(例えば腰に持病があるにも関わらず重たいものを断続的に運ぶ仕事)を課せられる場合などです。

このようなケースでは、仮にローパフォーマー型の問題社員への対応であったとしても、配置転換に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があると判断される可能性があります。

配置転換ではなく解雇はできないの?

解雇を検討したらまずは弁護士へご相談を

問題社員に対して解雇を検討する際には、まず弁護士に相談することを強くお勧めします。

解雇は最終手段であり、適切な手続きを踏まないと、解雇が無効となり2年分以上の賃金の支払いを要したり、損害賠償請求を受けたりするリスクがあります。

そのため企業法務に強い弁護士に相談することで、法的リスクを最小限に抑え、適切な対応を進めることが可能となります。

適切な指導や面談など、本人に改善のチャンスを与えましょう

解雇を行う前に、まずは適切な指導や面談を通じて、問題社員に改善のチャンスを与えることが重要です。

解雇の正当性を主張するためには、企業が改善の機会を提供したことを証明できる必要があります。ローパフォーマー型の問題社員への定期的な面談記録や指導履歴を残しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができるでしょう。

解雇の前に退職勧奨を実施しましょう

解雇を検討する前に、退職勧奨を行うことが望ましいです。

退職勧奨は、ローパフォーマー型の問題社員に自らの意思で退職することを促す方法で、企業にとってもリスクを減らす手段となります。退職勧奨を行う際には、社員に対して誠実に理由を説明し、合意を得る努力を怠らないことが重要です。

自主退職を促す目的での配置転換はNG

自主退職を促す目的での配置転換は、違法とされる可能性があります。

配置転換が実質的に社員に対する嫌がらせや退職強要と見なされる場合、その配置転換は無効とされるリスクがあります。

また、場合によっては不当な退職勧奨(解雇)とみなされてしまうかもしれません。ローパフォーマー型の問題社員を配置転換する場合は、明確な理由を持つことと慎重な手続きをとりながら進めることが求められます。

ローパフォーマー型問題社員や配置転換については弁護士にご相談を

問題社員への対応や配置転換に関しては、法的な知識と経験が求められます。西村綜合法律事務所では、企業法務に強い弁護士が対応し、有利な解決を目指します。

当事務所では、初回相談が無料で、オンライン面談も可能です。ローパフォーマー型の問題社員にお悩みの企業様はお気軽にお問い合わせください。

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