給食費を払わない家庭からの徴収について学校法人に強い弁護士が解説
学校法人の経営においては様々な法律トラブルが想定されますが、給食費の未納は多くの学校で発生しやすい問題のひとつです。
一般企業では「支払いがなければサービスの提供をしない」との対応が可能です。しかし、学校法人では児童生徒本人への配慮が要求され、給食の停止は現実的ではありません。
したがって、まずは保護者に自発的に支払ってもらえるよう対策を採っていく必要があります。
本記事では、給食費の未納に関する現状と要因を説明したうえで、予防策を紹介しています。
給食費の未納問題にお悩みの学校関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。
給食費の未納に関する動向
まずは、給食費未納の動向について、文部科学省が実施した調査を元に解説します。公表されている最新の調査は、全国で学校給食(完全給食)を実施している公立小・中学校約28,000校のうち、572校を抽出して行われました。
出典:文部科学省|平成28年度の「学校給食費徴収状況」の調査結果について
給食費未納が発生している学校法人数・割合
調査対象となった学校のうち、給食費未納の児童生徒がいた割合は、
- 小学校:6%(394校中164校)
- 中学校:5%(178校中97校)
です。
50校に1校の割合で抽出しているため、単純に考えると小学校で約8,200校、中学校で約4,850校もの学校で給食費未納問題を抱えてると計算できます。小中学校合わせて全体の半数近くで給食費未納が発生しており、学校にとって身近な法律問題といえます。
児童生徒数でいうと、小学校で0.8%、中学校で0.9%の割合です。3~4クラスに1人程度は給食費未納の児童生徒がいる計算になります。
給食費の未納が発生してしまう要因
では、なぜ給食費の未納が生じてしまうのでしょうか。
上記調査では、学校が認識している未納の主な原因についても公表されています。
調査結果によると、大きく分けて給食費未納には以下の要因が考えられます。
ひとり親世帯
まず考えられる原因として「保護者の経済的問題」が挙げられます。調査では、全体の18.9%で保護者の経済的問題が給食費未納の要因であるとされました。
割合を見て「意外と低い」とお感じになるかもしれません。この数字はあくまで学校側の認識に過ぎないため、実際には経済的理由で給食費を支払っていない家庭がより多い可能性もあるでしょう。
経済的要因で特に考えられるのは、ひとり親世帯です。母子世帯においては、母の平均年収が243万円、預貯金額50万円未満の割合が39.7%となっています(出典:厚生労働省|平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告)。
給食費の全国平均は、小学校で4,343円、中学校で4,941円です(出典:文部科学省|平成30年度学校給食実施状況等調査の結果について)。母子世帯では経済状況が厳しく、5,000円近い給食費を支払う余裕がない家庭も多いと想定されます。特に中学生になると、制服・部活動などで小学生のときより費用がかさみ、給食費の支払いが難しくなると考えられます。
給食費が未納となっているひとり親世帯には、国民健康保険料など他にも未払いがある可能性があり、経済的支援が必要です。
保護者意識
もうひとつ考えられる要因が「保護者としての責任感や規範意識」です。簡単にいうと「払えるのに払わない」ケースです。
調査結果によると、保護者意識による未納が68.5%にものぼっています。近年の給食費未納問題を考えるうえでは、忘れてはならない要因です。
たとえば、以下の理由で支払っていないケースが保護者意識による未納に該当します。
- 義務教育は無償だから給食費は支払わなくてよい
- 給食の味がまずいから支払いたくない
- 小食でも値段が同じなのは不公平だから支払わない
もちろん、いずれも未納にする正当な理由とはいえません。
しかし、現実としてこうした考えの保護者が存在する以上、何らかの対策が必要となります。経済的に支払い能力がある保護者に対しては、経済的困窮の場合とは別のアプローチが要求されるでしょう。
給食費の未納を防ぐには?
給食費の未納を予防するために考えられる対策としては、以下が挙げられます。
入学説明会等での給食費の支払いに関する説明実施
まずは、入学説明会などで給食費の支払いについて保護者に十分に説明する方法が考えられます。入学の段階で説明を施せば、保護者意識による未納の防止につながります。
説明する事項は、学校給食の意義・役割、給食費支払いの重要性などです。
給食の意義・役割としては以下が挙げられます(参考:学校給食法2条)。
- 栄養バランスのよい食事を摂取して、身体的成長をうながす
- 食に関する正しい知識や食習慣を身に付けさせる
- 食事の場を通じて社交性や協同の精神を養う
- 食生活が自然の恩恵によって成り立つと理解し、生命尊重や環境保全の重要性を知る
- 食生活が人々の活動に支えられていると理解し、勤労の重要性を知る
- 国や各地域の食文化を知る
- 食料の生産・流通・消費について理解する
これらの事項をわかりやすく説明して「給食費の支払いが児童生徒の成長に重要である」と保護者に理解してもらえるようにしましょう。
就学援助等の国・自治体が交付する制度の周知
経済的理由の未納に対しては、就学援助等の支援制度を保護者に周知するのが有効です。
就学援助制度とは、経済的理由で就学が困難になっている児童生徒の保護者に対して、就学に必要なだけの現金を給付する制度です。援助の対象は給食費・学用品費・通学費・修学旅行費・医療費など多岐にわたります。具体的な内容は自治体によって異なりますが、生活保護を受けていなくても利用が可能です。
就学援助制度の対象となっていても、その事実を知らずに申請に至らない家庭も少なくありません。保護者に制度の存在と内容を周知すれば、経済的に困窮する家庭の給食費未納に対して効果が期待できます。さらに、就学援助制度の給付から給食費を天引きする方法を採れれば、確実な徴収が可能です。
上述の文部科学省の調査によると、就学援助制度の活用推奨は多くの学校で実施されている方法であり、効果もあったとされます。積極的に検討してみてください。
PTA等も含めた学校全体での情報発信
入学説明会だけでなく、PTA等も含め、学校全体で定期的に給食費支払いに関する情報を発信していくのも重要です。
具体的には以下の方法が考えられます。
- ホームページ、学校だより、給食だよりなどに納付日・金額といった情報を記載する
- 保護者への一斉メールにより納付日・金額などを伝える
- PTAにも協力を依頼する
給食費未納への対応は、実際に支払いが滞った後になりがちです。しかし、滞納されてからの対応は、時間的にも精神的にも教職員の負担が大きくなってしまいます。未納を予防する観点から、給食費に関する事前の情報提供にも力を入れるようにしてください。
給食費未納に関するご相談は弁護士へ
ここまで、給食費未納の現状と要因、考えられる対策について解説してきました。
給食費の未納問題を抱える学校は半数近くにのぼり、学校が抱える典型的な法律問題のひとつです。未納となる要因としては、経済的事情や保護者意識が考えられます。予防のためには適切な情報発信が重要です。
実際に給食費未納でお困りの学校関係者の方は、弁護士への相談をご検討ください。弁護士は必要に応じて、支払督促などの法的手続を実行し、問題解決を全力でサポートいたします。
弁護士を選ぶにあたっては、その分野に精通しているかがポイントになります。
当事務所は、学校法人の法律問題に積極的に取り組んでおり、債権回収の実績も豊富です。教育現場の実情を踏まえ、児童生徒本人に影響が及ばない対応を目指します。給食費未納問題を解決したい方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
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