保護者対応って録音してOK?学校法人に強い弁護士がモンスターペアレントについて解説
近年、SNSの普及、権利意識の高まりによって、教育機関や学校法人に対し、子供の権利、保護者としての権利を主張する保護者が増加しています。
そのような権利主張自体が悪いわけではありませんし、正当な主張に対しては教育機関・学校法人としても真摯に対応しなければなりません。一方で、およそ法的根拠のないものや主張方法が悪質なものもあり、対応に苦慮するケースもあります。
後述しますが、やはり保護者対応時には学校側での録音を試みるとともに、保護者側での秘密録音を考慮して動くべきでしょう。
本記事では、教育機関・学校法人の運営に当たって、避けては通れない保護者対応について解説します。
また、学校や幼稚園への誹謗中傷にまで発展してしまった場合は弁護士へのご相談をお勧めいたします。詳しくはこちらのページをご覧ください。
教育機関・学校法人における保護者対応
教育機関・学校法人においては、日々、保護者から多種多様な連絡を受けることと思われます。その中には、不当な要求と即断できないものもあり、不当な要求か正当な要求かの線引きを、いざ連絡を受けた瞬間に判断することは簡単ではありません。
どこからが不当な要求にあたるのか?
まずは、不当な要求の具体例を紹介します。
撮影や録音の要求
「子供のいじめ対応について、納得がいかない」「担任を替えろ」と突然来校し、スマートフォンを取り出して「話合いの様子を動画に撮影したい、もしくは録音させてもらう」と要求をするケース¹があります。
同意のない撮影や録音によって容姿や発言内容を記録化され、相手方がそれを外部に公表するなどした場合、学校側の人間の人格的利益を侵害されるおそれがあります。そうした行為を強引に行うという意味で、不当な要求に当たると考えられます。
このような場合には、録音や撮影に応じる義務がないこと、撮影や録音の必要性がないことを理解してもらえるよう説明し、それでも要求を続けるようであれば、冷静な話し合いができるとは思えないため話し合いに応じることはできないと毅然と対応する必要があります。
将来的補償を含む金銭要求
児童が体育の授業中に転倒して頬面を打ち、前歯が欠けてしまったところ、治療費等の他に、保護者から将来的補償について「誠意を示せ。」と高額な金銭要求を仄めかす要求をされたケース²があります。
将来的補償の意味合いとして、一旦は怪我が回復したが、同じ場所がまた痛み出した等の場合の治療費等を本来、学校側が負う必要のない金銭的負担を負うことを要求しているケースであり、不当な要求に当たると考えられます。
ケガについての将来的補償の要否や補償金額は、医療的判断、法的判断が必要な事項です。現場だけで判断せず、専門家の判断を取り入れる必要があると思われます。
過去の指導についての責任追及
卒業生の保護者から、「在学中の校内でのいじめの指導が悪かったために、子供が精神的に病気になった」という連絡があったが、当時の担任や関係していた職員が異動してしまっているため事実確認もままならない中、次第に連絡の頻度や1回の対応時間も長時間になって通常業務に弊害が出ているというケース³があります。
通常業務を阻害する程度の対応をすることを求めているケースであり、不当な要求に当たると考えられます。
数年前の出来事であるため事実調査に時間がかかることを説明し、頻回の問い合わせには対応することが難しいことを説明する必要があります。
モンスターペアレントの定義
このような不当な要求を行う保護者は、社会的には「モンスターペアレント」と呼称されています。
「モンスターペアレント」という言葉は法律的な定義のある用語ではありません。あえて定義づけをするとすれば、不相当な方法で要求を行う保護者となります。
要求自体が不当でも、その要求方法が穏当で、話し合いを経て理解を得られるのであれば、対応困難ということはないだろうと思われます。一方、要求自体は法的根拠に基づく等正当なものであったとしても、冷静な話し合いができない場合には、「モンスターペアレント」に該当すると思われます。
保護者対応を職員に任せることのリスク
保護者対応全般に言えることですが、特に「モンスターペアレント」に対応する場合には、最新の注意を払う必要があります。
保護者の要求の当・不当が判断できず、いわゆる言質を取られてしまうこともあります。最初の窓口は担任教員になることが想定されますが、確定的なことは言わずに管理職に確認する等の案内をさせ、対応を保留することが必要です。
そのうえで、管理職が主導で、保護者との面談を設けるなど、具体的な状況の把握や対応策の検討に移っていきます。
保護者への対応時に有効なアクション
それでは、実際に保護者に対応する場合に知っておくべきポイントを紹介していきます。
保護者の主張・要求の正当性が確認できるように証拠を残す
保護者側の主張や要求について、録音等、客観的なもので証拠に残しておくことが必要となります。
まず、面談等の場面では、録音をすることを試みるべきです。言った言わないの無用な争いを避けることができますし、学校側の担当者としても不用意な発言をしないという抑止力にもなります。また、録音をする際には、相手の同意を得ておくことが望ましいといえます。無断で秘密裏に録音をしたとしても、違法な行為として損害賠償などをされるケースは少ないと思われますが、保護者側の感情を逆なですることにつながり、建設的な話し合いや和解への道を断ってしまうことになりかねません。
なお、保護者側が秘密録音をしている可能性は常に気を払っておくべきです。録音機器も発達しており、会話の相手に悟られずに容易に録音を行うことができます。学校側の担当者としては、録音されて、後に付け込まれないように発言には十分に注意しておく必要があります。
また、録音以外の方法としては、通知文や手紙で要求をまとめてもらうということも有用です。
学校法人内での対処方法をマニュアル化しておく
組織の規模が大きくなるほど、保護者への対応窓口が細分化され、担当者個々人の対応に差が出てくることが想定されます。そうしますと、保護者の間で対応に差が出てきてしまうことになり、不公平感を生み、余計な揉め事の火種となりえます。昨今では、SNSも発達しているため、保護者間の情報共有は頻繁に行われています。
そこで、公平かつ統一的な対応をするため、対応マニュアルを作成することが必須といえます。
最初に保護者からの連絡を受けたときの対応方法、その後の窓口となる者、最終的に学校としてどんな対応をするのかを決定する者等を決めておき、それぞれどのようなフローで対応をするのかを明確にしておくことが望ましいといえます。
職員が対応した場合には個別でフォローを実施
保護者に一番近いという意味で、初期対応は担任等の教職員になろうかと思われます。しかし、当該教職員をそのまま保護者対応の窓口にすることは避けるべきです。
担任業務や部活動顧問業務の中、保護者対応窓口となることは教職員にとって負担が重く、別のクレームを喚起することも想定されますし、また、精神的に疲弊して休職などということになれば学校法人側の管理責任も問われかねません。
初期対応時のことを引き継いだうえで、担任等を関与させることは必要な範囲にとどめておくことで、二次的なトラブルを避けることができるだろうと思われます。
日頃から、学校側内部でコミュニケーションをよくとっておくことが必要です。
教育機関・学校法人におけるトラブルは弁護士にご相談ください
以上、保護者対応で知っておくべきポイントを概説しました。
このような保護者対応に限らず、トラブル解決の基本は迅速に対応することです。
モンスターペアレントへの法的措置などについてはこちらのページで詳しく解説しておりますのでご覧ください。
保護者対応で既にトラブルになっている方に限らず、気にかかる点がある、トラブルに発展しそうな予感がするという方でも、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
¹ 東京都教育相談センター「学校問題解決のための手引き~保護者との対話を生かすために~(令和4年3月(改訂))」35頁
² 前掲¹ 36頁
³ 前掲¹ 38頁
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