教職員のパワハラや学校の労務トラブルについて弁護士が解説

 

教育機関において、教職員同士のトラブルやパワハラ行為は決して珍しいものではありません。ハラスメント行為は、労働者のメンタルヘルスに悪影響を与えるだけでなく、生徒や保護者にも悪影響を及ぼす恐れがあります。本記事では、教育機関でのパワハラ行為が発生した場合、どのような対処法があるのか、また、労働時間管理の不備やハラスメント行為が起きた際の現状の確認方法や対処法について解説します。教育機関での社内トラブルやパワハラ行為に悩む方は、西村綜合法律事務所にご相談ください。

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学校法人における社内での労務トラブル

そもそも、パワハラを含めて学校法人においてどのような労務トラブルがあるのかについてご説明させて頂きます。

労働時間の超過による残業代請求

労働時間は、就業規則に定めた時間のみを指す概念ではありません。学校法人の指揮命令監督下で過ごした時間は労働時間に入ります。例えば、学校法人の教育方針等によって課外活動や部活動などを教職員に担当させているのであれば、教職員の担当時間は労働時間にあたります。教職員は、担当時間について給料が支払われていなければ残業代を請求することができます。そのため、タイムカード、パソコン記録、手書き申請などによって労働時間を確定し、未払い残業代の発生防止が重要となります。

休日出勤等の労働時間管理の不備

休日出勤について、学校法人が把握していないことがあります。その場合、労働時間管理の不備が学校法人側の責任となります。学校法人は労働時間に応じて対価を教職員に対して支払う義務があります。そのため、労働時間を把握する義務は学校法人にあると考えられています。学校法人の業務と関係ないことについては、休日に学校法人の施設を教職員に使用させないことが重要です。

教職員内でのハラスメント行為

全日本教職員組合の青年部常任委員会の調査によれば全体の1割以上がハラスメントを理由に学校を辞めたいことがあると回答しています。また、ハラスメントの加害者は、パワハラでは、管理職が43.5パーセント、同僚が65.2パーセント、セクハラでは、管理職が22.7パーセント、同僚が62.1パーセント、マタハラでは、管理職が45.5パーセント、同僚が54.5%となっています。つまり、同僚からのハラスメントが多いです。

学校法人で起こりうる教職員内でのハラスメント例

学校法人で起こりうる教職内のハラスメントの例についてご説明させて頂きます。

生徒の前での罵倒、避難

生徒の前での罵倒、非難がハラスメントの一つにあたります。なぜなら、生徒の前で、わざわざ教員の評価が下げるような行為は教員としてのプライドを傷つけるものだからです。他の教員に向かってコミュニケーションのつもりで、唾をかけた子どもいた時に担任の教員に向かって「唾を吐かせるのはおかしい、指導が間違っている」「責任を取れ」と言われ、腹部を殴られたりするケース、他の教員から生徒の前で怒鳴られ人格を否定されたような発言を更に生徒に向けて言っていたケースがあります。

教員に対して何か指導をする場合は、場所を考えて生徒がいないところで行うという配慮が必要です。

一定の範囲を超えた過剰な指導

一定の範囲を超えた過剰な指導もハラスメントにあたります。なぜなら、過剰な指導は必要以上に指導される側の教員にストレスを与えるものだからです。過去のミスについてずっと指摘続けるケースや職員会議で1時間以上叱責されるケースがあります。

指導とハラスメントの境界線は難しいとされています。しかし、誰が見ても過剰であると判断するような指導はすべきではありません。

教職員間での孤立

教職員間での孤立も、ハラスメントにあたります。いわゆる教員間のいじめです。例えば、一人の教員に何も知らせずに物事を始めたり、行事の計画を一切伝えたりしないケースや職員会議中に一人だけ途中退出を命令するケースがあります。

ハラスメント行為が起きた時に確認すべきことと対処法

ハラスメント行為が起きた時に確認すべきこと及び対処法についてご説明させて頂きます。

現状の確認(当事者間、他先生への確認)

ハラスメントの被害の相談・申告があった場合、被害者からの相談または申告の受け入れおよび加害者とされている教職員の主張の聞き取りが必要です。

学校法人が被害者から詳しい事情を聴き取る際には、被害者のプライバシーに配慮して、他の教職員が相談内容はもちろん、相談していること自体を知ることができないように、専用の相談室などを用意した方がよいでしょう。実際に被害者から事情を聴き取る際には、被害者の意見を丁寧かつ正確に聴き取るべきです。被害者からは、ハラスメントの具体的な内容、すなわち、加害者とされる者の氏名、加害者とされる者の具体的な言動、ハラスメント被害が発生した日時、場所、回数及び継続期間などを聴き取るべきです。なぜなら、これらの内容は、学校法人がその後に行うべき事実認定の起点になるからです。

そして、聞き取った内容は正確に記録し保管しておく必要があります。もし、被害者からの聴き取りを不十分・不正確な状態で終わらせると、被害を適切に解決することが困難になるおそれがあると同時に、誤った事実認定に基づいて加害者に処分を加えてしまった場合、後に重大なトラブルの要因になってしまいます。したがって、被害者からの意見聴取は慎重に行うべきです。しかし、長い時間を割いて一回で被害者から意見を聴き取ることは被害者の負担が大きくなります。

そこで、事実関係が複雑等で聞き取りに長時間を要すると判断した場合、相談日時を複数回に分けて、被害者の負担を軽減するようにすべきです。

被害者の話を聞いた後に

被害者からの事情聴取が完了した後は、被害者からハラスメント行為の加害者であるとされている教職員の事情聴取を行い、被害者側と加害者側双方の言い分をしっかり聴き取ることが必要です。さらに被害者側と加害者の言い分に食い違いが生じている場合、その同僚等のハラスメント行為が起きたとされる現場に居合わせた第三者の有無を調査して、当該第三者がいる場合、目撃証言などを得るため、その第三者への事実の聴き取りが重要になります。第三者の証言が、被害者側または加害者側の一方が主張している事実の内容と一致または類似している場合、その主張内容が事実であると判断する理由として考慮できます。

被害者側又は加害者側の事情聴取では、それぞれの言い分を聴くことに集中すべきです。両者の言い分の聞き取りは事実認定の向けた資料集めです。聞き取りの段階で、法人の担当者が自分の意見を相手に伝えることは、対象者の主張を聴き取る時間を削るだけでなく、対象者の気分を害し、丁寧な聞き取りの継続が困難になるおそれがあります。そのため、法人の担当者は、聞き取り対象者を責めたり、問い詰めたりせず、中立的な立場で相談に応じたり、事実を聴取したりすることが重要です。

最初に被害者から聴き取りをした際に、被害者の言い分にインパクトがあり、印象に残ってしまうため、被害者の言い分のほとんど全てが事実であるとの先入観を持ってしまうという事態が時々発生します。しかし、加害者の言い分の方が正しい可能性があることを念頭に置かなければなりません。場合によっては、被害者に重大な事実誤認や虚偽の報告がある場合もあり、ハラスメント被害が事実無根であることもあり得ます。

事実認定は、事実聴取や事実調査によって得られた情報の中から、多くの人が事実だろうと思うような、事実であると客観的かつ合理的に考えられる事項を事実であると認定しなければいけません。

事実内容に基づいた指導・改善に向けた対応策の提示を指示

事実認定の結果、ハラスメントの被害の存在が確認できた場合、ハラスメントの内容、ハラスメントによって被害者が受けた被害の程度、ハラスメント行為の期間や回数などを総合的に考慮した結果、加害者に対する処分を決定します。加害者に対する厳重注意、指導、被害者への謝罪などにより解決可能な場合があります。

改善が見込めない場合、退職・解雇等の検討

悪質なハラスメントが行われ、被害者が重大な被害を受けたような場合には、法人が就業規則で定める懲戒処分の検討をすべき場合があります。

一般的な懲戒処分としては、1けん責・戒告、2減給、3出勤停止、4降格、5諭旨解雇、6懲戒解雇の順に重い処分として定めていることが通常です。

懲戒処分を行う場合には、ハラスメント行為・被害の内容と処分の重さの程度を比較して、両者の均衡が取れたものであることが要求されます。もし、均衡が取れていない場合、懲戒処分が無効となってしまうことがあります。ハラスメントの内容・被害が深刻であればあるほど、法人としては重い処分を下すことを検討すべきです。

例えば、2年以上に渡りセクハラ行為が継続していたケースでは最も重い処分である懲戒解雇を視野に入れるべきです。他方で、上司が部下に一度だけ暴言を吐いたケースでは、懲戒解雇を下すべきでありません。そして、加害者に対する懲戒処分の内容は、被害者に対しても報告・説明する必要があります。

被害者から聞き取った事情をもとにどのような事実認定を行い、認定した事実に基づき、どのような理由でどのような処分を下すに至ったのかを被害者に対して明らかにすることで法人の対応として行った処分の透明性・公正性を示すことが可能になります。

教職員間のハラスメントは西村綜合法律事務所にご相談ください

西村綜合法律事務所では、学校法人・幼稚園・保育園や教育機関での法律問題に積極的に取り組んでおり、対応実績も豊富な弁護士が所属しております。教職員のパワハラ行為に関する対応についてはお悩みの方は、是非一度法律の専門家である弁護士にご相談ください。

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