児童の事故が起きたら?保護者に説明を行う際の法的注意点

児童・生徒の身に何かあった場合に、学校としていかなる対処をするべきでしょうか。未然にそうした事故がないように対処することは当然ですが、確実に事故を防ぐことは極めて困難です。学校運営者として、そうした事故に備えておくことは必要不可欠なことでしょう。

昨今では、学校内での事故に対する社会的関心が高まり、SNS等による情報発信手段も発達しているため、中途半端な対応を行うことによる不利益は非常に大きく、そうした対応は絶対に避けるべきです。

本記事では、学校事故への対処法を、法律的な観点から、具体的事例を交えて説明していきます。

学校事故に関する基礎知識

まず、学校事故に関する基礎知識を確認しましょう。

学校事故とは

法律上、学校事故という言葉に明確な定義はありません。社会的には、学校の管理下において、学内外における活動または学校設備に起因して、児童・生徒が怪我を負ったり、死亡してしまったりする事故のことをいいます。

必ずしも学校の敷地内で起きた事象に限定されるわけではありません。

学校事故が起きてしまった場合の事態

学校には、多くの関係者がいます。学校事故が起きた場合には、各方面で様々な影響が発生してしまいます。当該事故によって被害を受けた児童・生徒、学校を念頭にどんな影響がありうるかを紹介します。

H4 児童・生徒の社会生活が困難になる可能性

軽微な事故であれば、一定期間後に学校や社会に復帰できることとなりますが、重篤な事故の場合、治療に長い時間がかかったり、最悪の場合には亡くなってしまったりする可能性もあります。また、いじめによって精神障害を負ってしまった場合には、児童・生徒のその後の人生に長く影響を及ぼす可能性もあります。

保護者からの損害賠償・訴訟への発展

次に、学校側への影響です。

児童・生徒の保護者から、当該事故の責任を追及され、場合によっては訴訟を提起される可能性もあります。事故や児童・生徒への損害の軽重、学校側の対応によっては、裁判外の交渉段階で終了することもありえますが、訴訟に発展した場合には、学校側としても訴訟対応をする必要があり、その対応に人員や時間を割かなければなりません。

学校法人名の公表

冒頭にも触れましたが、学校事故に対する社会的関心は高まっています。被害者である児童・生徒にかかわらず、学校事故をマスコミや不特定多数の者に口外する者が現れることがあります。

そうすると、社会の関心が一挙に集まり、事実の真偽にかかわらず、学校法人の風評に大きな影響を与えることとなるでしょう。学校法人の経営や将来の存続にかかわる問題であり、事前の適切な対処が必要な事柄といえます。

過去に起きた児童事故の事件

それでは、文部科学省のホームページ(https://www.mext.go.jp/)に掲載されているものから抜粋して、過去に起きた児童・生徒の事故を紹介していきます。

事例①-高校サッカー部活動中の熱中症事故

【事案】

部活動顧問の指導下で、ウォーミングアップ、基礎練習等で体を慣らした後、湖一周ランニング(約9.5㎞、40~60分コース)を行いました。当該生徒は、学校まで残り200mの付近で意識を失い倒れました。当該生徒は、救急搬送後、重度の熱中症による急性腎不全や肝機能障害の可能性ありと診断され、その後、高度医療を受けるために転院をするが症状が回復することなく、多機能不全により5か月後に死亡しました。

【顛末】

生徒の遺族側からの訴訟提起はなく、学校教育部長や医師、教育委員会委員ら有識者による事故検証の末、事故要因の特定とそれに対する対策が提言されました。

事例②―高校春山安全登山講習会での雪崩事故

【事案】

3月に実施された高体連主催の春山安全登山講習会において、班別の登山行動中に雪崩が発生し、講習会参加者55名中、生徒7名、教員1名が死亡、重傷4名、中等傷3名、軽傷等33名の被害者を出す事故に至りました。

【顛末】

遺族や受傷者からの訴訟提起はありませんでした。弁護士、大学教授、専門調査委員、救命救急センター職員、消防職員、地方気象台観測予報管理官ら有識者による事故検証の末、事故要因の特定とそれに対する対策が提言されました。

事例③―小学校体育授業中のゴールポスト転倒事故

【事案】

公立小学校で、体育のサッカーの授業中、キーパーをしていた児童が味方がゴールを決めたことを喜び、自陣のゴールネットのロープにぶら下がったところゴールが揺れ、児童は落下し、さらに倒れてきたポストの下敷きになった。担任と数名の児童が駆け寄りゴールポストを持ち上げ児童を移動させたが、児童は倒れたまま、唇から出血した状態であった。児童は病院に搬送され、その後、大学の高度救命救急センターへ移送されましたが、死亡しました。

【顛末】

本件は、遺族によって訴訟提起がされたため、内容を具体的に確認しましょう。

亡くなった児童の両親(原告)が、小学校の設置者である地方公共団体(被告)に対して、⑴ゴールポストを適切に固定しなかったなどの安全配慮義務違反があるとして、国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償請求訴訟を提起しました。原告は、予備的に、⑵ゴールポストには設置又は管理の瑕疵があるとして、同法2条1項に基づく損害賠償、⑶在学契約上の付随義務として、本件事故について調査・報告をし、調査に関して原告の意向を確認し配慮する義務を怠ったとして、同法1条1項に基づく損害賠償を請求しました(福岡地裁久留米支部判決令和4.6.24)。

裁判所は⑴について、本件事故以前から、ゴールポストが転倒しないように配慮すること、固定状況について点検を実施すること、本件と同様の死亡事故が生じていることを文科省が通知しており、校長はこの通知を認識していたため、本件事故の発生は容易に認識できたが、そうした配慮や点検がなされていないとして、学校側に注意義務違反があると認めました。

一方で、裁判所は⑶について、文科省作成の「学校事故対応に関する指針」は、事故後の調査に関して、この指針は直ちに義務の内容となるものではないとしつつ、具体的な調査方法や内容については基本的には第三者委員会である調査委員会に委ねられるものであり、学校側に、調査に関して保護者の意向を確認し、調査内容及び方法等について保護者と協議する義務や、必要かつ相当な調査が尽くされているかどうかについて保護者の意向を確認し対応する義務は認められないとしました。

学校事故対応に関する指針について

事例③(小学校体育授業中のゴールポスト転倒事故)でも触れましたが、文科省は、「学校事故対応に関する指針」(https://www.mext.go.jp/)を取りまとめています。

指針全体としては、概ね、学校現場における重大事故・事件において、情報公開や原因調査等の学校側の対応について国民の関心が高まっていることをうけ、学校側に対して、事故対応の在り方に係る危機管理マニュアルの見直し・充実、事故対応に当たっての体制整備等、事故発生の防止及び事故後の適切な対応の参考、という趣旨とされています。

ポイント①-事故発生の未然防止のための取り組み

事故発生の未然防止のための取り組みとして、教職員研修や各種マニュアルの策定、事故事例の共有、保護者や地域住民、関係機関等との連携・協同体制の整備等を行うよう定められています。

ポイント②-事故発生後の取り組みと調査

事故発生直後、初期対応における取り組みとして、具体的な報告先やその後の流れが詳細に定められています。

初期対応後は、基本調査を速やかに行います。この基本調査は、事案発生後、速やかに着手する調査であり、当該事案の公表・非公表にかかわらず、学校がその時点で持っている情報及び基本調査の期間中に得られた情報を迅速に整理するとされています。もっとも、この基本調査をする必要があるのは、死亡事故または被害児童生徒等の保護者の意向も踏まえて、学校設置者が必要と判断した事故とされています。調査主体は、原則として学校が実施し、学校設置者が指導・助言を行うとされています。

基本調査後、学校設置者が、被害児童生徒等の保護者の意向に配慮しつつ詳細調査への以降を判断します。なお、少なくとも、㋐教育活動自体に事故の要因があると考えられる場合、㋑被害児童生徒等の保護者の要望がある場合、㋒その他必要な場合には、詳細調査を実施することとされています。詳細調査は、基本調査を踏まえ、学識経験者や学校事故対応の専門家など外部専門家が参画した調査委員会において行われるとされています。詳細調査は、特別の事情がない限り、学校設置者が主体となって行います。最終的に、事故に至る過程や原因の調査と再発防止・学校事故予防への提言、被害児童生徒等の保護者への説明、報告書の公表がなされます。

ポイント③―再発防止策の策定・実施

詳細調査の終了後、学校や学校設置者は、報告書による提言を受けて、速やかに具体的な設置を講ずるとともに、講じた措置及びその実施状況について、適切に点検・評価を行います。学校の設置者は、報告書を国にも提出し、国は、報告書の内容を他の学校、学校設置者にも周知します。

学校での児童事故に関する相談は弁護士へ

児童・生徒の事故が学校内で起きてしまった場合、一般的な民事事件とは異なり、学校内という特殊な要因が加わってきて、その対応には専門的な知識と経験が必須となります。当事務所は、学校法人に対する顧問対応の実績があり、そうした専門的な知識と経験を有しており、迅速かつ的確に対応することができます。

児童・生徒の事故が起きてしまった場合には、一度当事務所にご相談ください。

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