授業で許される著作権って?学校法人に強い弁護士が徹底解説

学校においては、文献・映像・音楽などを使用する場面が数多くあるでしょう。これらには作成者のコピーライト(著作権)があるため、使用に際しては十分に注意しなければなりません。

「学校教育の場面では自由に使っていいはずだ」とお考えになっている方もいますが、利用には細かい要件があります。学校図書館での映画DVDの貸し出し、教材のコピーなど、注意すべき行為は数多いです。

知らないうちに法令違反とならないために、学校現場におけるコピーライトの扱いについて知識を持っておかなければなりません。

本記事では、

  • コピーライトの内容
  • 学校においてコピーライトに配慮すべき場面
  • 学校が取るべきコピーライト侵害に対する対応策

などについて解説しています。

学校経営者や教職員の方々が知っておくべき内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

コピーライトについて

コピーライト(著作権)とは、著作物に生じる権利です。たとえば、文章、音楽、絵画、映画などが著作物に該当します。プロが営利目的で作成したものに限らず、児童生徒の作文や作品も立派な著作物です。

著作物を作成者に無断で使用すると、著作権侵害として違法になり、損害賠償請求などを受けるリスクがあります。学校現場においては例外的に許諾を要しない場面がありますが、範囲や限界は十分に理解しておかなければなりません。

まずは、コピーライトの内容や学校において注意すべき場面の例を解説します。

著作権の保護期間や権利者の権利について

現在の法律において著作権が保護される期間は、原則として、著作物が創作された時から著作者の死後70年までです(著作権法51条)。創作されたのが2000年、著作者の死亡が2030年であれば、2000年から2100年までの計100年間が保護期間になります。

現実には、著作者が存命である、あるいは死から70年を経過していない文章、音楽、映像、イラストなどは多いでしょう。保護期間内の著作物については、基本的に無断で使用してはなりません。

 

著作権者が有する権利の内容は、おおまかに「著作者人格権」と「著作財産権」に分けられます。

著作者人格権は、著作者の作品への思いを保護するための権利です。具体的には、著作権法上は以下の権利が規定されています。

名称 条文 内容
公表権 18条 公表するか否か、公表する際の方法などを決定する権利
氏名表示権 19条 著作者を示すか、実名かペンネームかを決定する権利
同一性保持権 20条 意に反して著作物の改変を受けない権利

たとえば、教員だけに見せるつもりで児童生徒が作成した文章を、勝手にコピーして学級通信で配布すれば、児童生徒が有する公表権を侵害します。文集への掲載が前提となっていた作文であっても、オリジナルの表現を無断で変えれば、同一性保持権に対する侵害行為です。

 

もうひとつの著作財産権は、著作者の財産的な利益を保護するための権利です。著作権法上は以下の権利が規定されています。

名称 条文 内容
複製権 21条 コピーする権利(印刷、録音、録画など)
上演権・演奏権 22条 公衆に上演・演奏する権利
上映権 22条の2 公に上映する権利(映画館、ディスプレイなど)
公衆送信権 23条 放送やインターネットなどを通じて届ける権利
口述権 24条 公に朗読、講演など口頭で伝達する権利
展示権 25条 美術作品や写真のオリジナルを公に展示する権利
頒布権 26条 映画をDVDなどで譲渡・販売・レンタルする権利
譲渡権 26条の2 映画以外の著作物を譲渡する権利
貸与権 26条の3 映画以外の著作物をレンタルする権利
翻訳権・翻案権 27条 翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などする権利
二次的著作物の利用権 28条 二次的著作物があるときに、オリジナルの著作者が二次的著作物の利用について有する権利

たとえば、合唱祭の様子を撮影したDVDを保護者に配布する場合、楽曲の複製権の侵害に該当するため注意が必要です。

学校図書館におけるコピーライトの注意点

著作物を利用するときには、原則として権利者の許諾を得なければなりません。もっとも、すべての場合に許諾を求めるとすると、著作物を円滑に利用するのが困難になります。そこで著作権法には、許諾なく使用できるケースが示されています。

 

たとえば、非営利かつ無償であれば、公表された著作物の複製物の貸し出しが可能です(38条4項)。したがって、学校図書館で書籍や音楽CDを貸し出す際には、権利者の許可を得る必要はありません。もっとも、映画は38条4項の対象から除かれているため、無断で映画DVDを児童生徒に貸し出してはなりません。

 

許諾なく使用できる別のケースとして、法令で定められた図書館等において、著作物の一部分を複製する場面が挙げられます(31条1項)。大学図書館はこの対象ですが、小中高の学校図書館は対象に含まれていません。授業での使用を目的とするコピーは次に紹介する35条により可能ですが、それ以外であれば法令違反になる可能性があります。

教材のコピーライト侵害の具体例

著作物を許諾なく使用できる例外的なケースとして、学校の授業での利用を目的とするコピーは認められています(35条1項本文)。たとえば、教員が小説の一部をコピーして授業で配布したり、児童生徒が調べ学習のために新聞をコピーしたりするのは、権利者の許諾を得ずに可能です。

もっとも、著作権者の利益を不当に害するときには、認められません(35条1項ただし書き)。たとえば、問題集やドリルなどの教材は、児童生徒が1人1部購入することを前提としています。授業のためだとしても、コピーを配布すれば、出版社の利益を不当に害する結果となるため許されません。

学校が取るべきコピーライト侵害に対する対応策

図書館や教材の事例でもおわかりいただける通り、教職員が無意識のうちにコピーライトを侵害しているケースは少なくありません。

原因としては、法的知識が不足していて、「学校ではコピーを配布・送信しても大丈夫」という意識を持ってしまいがちな点が挙げられます。研修などを通じて、コピーライトの侵害になり得るケースを指導していく必要があるでしょう。

もっとも、個々の教職員がコピーライトに関して完全な知識を得るのは容易ではありません。経営者や管理職が一定の知識を得ておくとともに、判断に迷うときには弁護士に相談するのも有効です。

教材の正規購入や許諾利用の重要性と予防策について

学校現場における著作権侵害の中でも、ドリル・ワークブックなどの教材のコピーは、特に発生してしまいがちな事例といえます。教材を正規ルートで全員分購入するとともに、権利侵害のおそれがあるときには出版社に確認してください。

市販の問題集を勝手にコピーして配布するなどの問題が生じると、出版社とのトラブルになるリスクがあります。個々の教職員に徹底したうえで、危険な行為がないかチェックするようにしておきましょう。

学校のコピーライトについては西村綜合法律事務所まで

ここまで、学校におけるコピーライトについて、図書館や教材における問題を中心に解説してきました。

他にも、児童生徒の作品に生じる権利や入学試験問題の公表など、学校においてコピーライトが関わる場面は数多いです。新型コロナウイルスの流行により、オンライン授業をめぐる問題も生じています。判断が難しいケースも多いうえに、法改正が頻繁にあるため最新法令のチェックも疎かにできません。

 

学校におけるコピーライトについては、西村綜合法律事務所の弁護士までご相談ください。当事務所は学校法人の皆様から数多くの相談を受けており、学校に関係するコピーライトにも精通しています。権利を侵害するのか難しいケースだけでなく、著作物の使用に関して少しでも気になる点がある学校関係者の方は、お気軽にお問い合わせください。

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