学生からの留年・退学・除籍処分に関する不服申し立てへの対策について

学生の成績が不十分である場合や、学生が犯罪行為などの重大な非行行為を行った場合、学校法人としては学生を留年させたり、退学、除籍処分に付すことがあります。

もっとも、これらの処分は学生の身分に大きな影響を与えるものですので、多くの学校法人では学生からの不服申し立てを受け、個別に対応を行っているところです。また、処分を受けた学生が裁判でその処分の当否を争うことも考えられるところです。

今回は、学生側からの留年・退学・除籍処分に関する不服申し立てへの対策について解説します。

学生の留年・退学・除籍処分とは

不服申し立てが問題になり得る学生に対する処分としては、留年・退学・除籍処分といったものが存在します。

留年・退学・除籍処分の定義と概要

留年

留年とは、必要な単位を取得できなかったといった理由で進級の条件を満たさず、同じ学年をもう一度繰り返すことをいいます。原級留置ということもあります。

留年は後述の退学や除籍といった処分よりも内容が軽いとはいえますが、それでも進級や卒業が他の学生よりも1年遅れるため、学生に対して大きな影響を与えることになります。高校生ではあまり留年は多くはないかと思われますが、大学では留年する学生が一定数存在するところです。

退学

退学とは、学生が学校をやめること、あるいは、学校が学生をやめさせることをいいます。前者を自主退学といい、後者を退学処分といいますが、学生からの不服申し立ての関係で問題となるのは退学処分の方になります。

退学処分は、校長(大学の場合は一定の学部長を含む)の懲戒処分として行われるものですが(学校教育法11条)、以下の場合に限って退学処分を行うことができるものとして一定の制限が課されています(学校教育法施行規則26条3項)。

・性行不良で改善の見込がないと認められる者
・学力劣等で成業の見込がないと認められる者
・正当の理由がなくて出席常でない者
・学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

除籍

除籍とは、学校が学生を在籍者の名簿から外すことをいい、学生は学校の生徒ではないという扱いを受けることになります。学生がその地位を失うという点では退学と同じですが、除籍が行われると、学校によっては、除籍者について在学中に取得した単位を認めない、成績証明書を発行しない、編入を認めないといった扱いをする場合があり、除籍のほうが不利な扱いを受けることが多いようです。

なお、在籍者の名簿から外すと聞くと、あたかも最初から学校に入学していないかのような扱いを受けるものと思われがちですが、除籍証明書を発行する学校も存在しており、学校での記録は残ることになります。

処分が行われる背景や理由について

留年・退学・除籍といった処分が科される背景や理由としては主に次のようなものが考えられます。

・出席日数不足

正当な理由なく学生が学校に登校しないなど、進級・卒業のための出席日数に足りない場合は、留年・退学・除籍といった処分が行われる可能性があります。

・成績不振

学生の学業成績が悪く、進級や卒業に必要な単位を取得できなかった場合、留年・退学・除籍といった処分が行われる可能性があります。

・犯罪行為

学校の内外を問わず、学生が暴力、恐喝、窃盗、強盗といった犯罪行為に手を染めてしまった場合は、留年・退学・除籍といった処分が行われる可能性があります。

・重大な非行

犯罪行為に当たらない行為であっても、飲酒、喫煙、ドラッグといった重大な非行が行われた場合は、留年・退学・除籍といった処分が行われる可能性があります。

・校則違反

そのほか、犯罪や非行とは言えない行為でも、頭髪等に関し校則でルールが設けられており、これに違反した場合は、留年・退学・除籍といった処分が行われる可能性があります。

処分に対する学生の不満と不服申し立ての位置付け

留年・退学・除籍といった処分は、学生の地位に直接影響を与えるものであり、学生の将来にも多大な影響を与える可能性もある処分です。

そこで、学生身に非がある場合でも、処分が重すぎるとして学生が不満を持つ可能性は十分考えられるところです。

また、学校の調査能力や事実認定能力にも限界が存在するため、学生からすれば誤った事実認定に基づいて処分が科されてしまう場合があることも否定できません。そのような場合にはほとんどの学生が処分結果に不満を持つものと考えられます。

そして、処分に納得できない学生は、学校に対して不服申し立てを行う場合があり、学校としてはこのような不服申し立てに真摯に対する必要が生じます。なかには、処分の影響の大きさに鑑みて、留年・退学・除籍といった処分に対する救済機関を設置している学校法人も存在しているところです。

不服申し立てについて学校側が弁護士をたてるメリット

上記のとおり、留年・退学・除籍といった処分は、学生に大きな影響を与えるものであり、慎重に処分を行う必要があります。また、万が一これらの処分に対し、学生から裁判を提起され、学校法人が敗訴すれば、学校のレピュテーションに悪影響を及ぼすことになります。

そのため、留年・退学・除籍といった処分に対して、学生が不服申し立てを行ってきた場合は、早期に弁護士に関与を求め、アドバイスを得ながら手続を進めることが大切になります。

弁護士のサポートが提供できる具体的な支援内容

学生からの不服申し立てに対しては、弁護士は以下のようなサポートを行うことが可能です。

・事実関係の調査及び事実認定に関するリーガルサポート

学生に対して処分を行うには、まず当該学生がどのような行為をしたのかを適切に認定する必要です。

しかし、調査の専門家でない学校法人の職員からすれば、証拠に基づいて適切な事実関係を認定することが困難な場合も存在しますし、日頃の行いから学生に対して抱いている予断や偏見が、正確な事実の把握を阻害することがあります。

弁護士は、裁判を職業としており、証拠に基づく正確な事実認定を行う能力に長けていますので、弁護士のサポートを受けることで、正確に事実関係を調査し、適切な事実認定を行うことが可能になります。

・処分の妥当性についてのリーガルサポート

上記のとおり、学校は、学生を懲戒することが可能とされており、懲戒を行うにあたっては一定の裁量を有しているとされています。

例えば、最判平成8年3月8日判決では、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべき」としています。

もっとも、このような裁量も無制約とは考えられておらず、上記の最判平成8年3月8日判決では、「校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合」は、処分が違法になるとされました。また、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であり、留年も学生に与える不利益が大きい措置であるとして、「要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要する」と判示して、学校の処分を違法と判断しています。

学校法人が学生を処分する場合は、このような法的枠組みを前提に処分の妥当性を検討する必要があり、その判断については、様々な裁判例に通じる弁護士のサポートを受けることが最も信頼できる対策ということができます。

学生からの不服申し立てに関する相談は西村綜合法律事務所まで

留年・退学・除籍といった処分は、学生に大きな影響を与えるものです。これらの処分に対して、学生から不服申し立てがなされた場合には、学校としては慎重かつ真摯に対応する必要性がありますので、弁護士のアドバイスを活用することをお勧めします。

学生からの不服申し立てに関する相談は西村綜合法律事務所までご相談ください。

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