学校側からモンスターペアレントに法的措置は可能?モンペの対応を学校・幼稚園・保育園に強い弁護士が解説
学校法人にとって、モンスターペアレントとの対応は避けて通れない問題です。しかし、モンスターペアレントに対して適切な法的措置を知らないまま対応すると、さらに問題を複雑化させてしまう可能性があります。
本記事では、モンスターペアレントの傾向や適切な対応方法を紹介するとともに、法的措置についても解説します。学校法人の方は、ぜひご一読ください。
モンスターペアレントの傾向・特徴
モンスターペアレントとは、学校に対して自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者を指します。
本項では、モンスターペアレントの傾向・特徴について以下で説明させて頂きます。
権利の過度な主張
モンスターペアレントの態様の一つとして権利の過度な主張が挙げられます。具体例としては、タレントスクールに子供を通わせている親が、「将来、秘蔵映像として出回ると困るので窓際の席に座らせないでほしい」、「日焼けすると困るので外で行う体育の授業は全部欠席させてほしい」という他の生徒と異なる扱いを求める場合が挙げられます。
憲法26条1項において国民に対する教育を受ける権利を保障しています。しかし、当該権利は国民が国家に対して合理的な制度と実施を整えた上で適切な教育の場を提供することを要求する権利であって、保護者が教師や学校に対して特定の子供について特別な措置を求めることを認める権利ではありません。そのため、具体例のように自分の子供について特別な措置を求めてくることは権利の過度な主張であり、そのような親はモンスターペアレントに該当します。
暴力・暴言
モンスターペアレントの中には、暴力・暴言を行う場合もあります。具体例としては、自分の子供を特別扱いするよう要求してきた保護者に対して教師が電話で、他の子供と異なる扱いができないと回答したところ、来校してその教師に掴みかかり、大声で学校を辞めるよう要求し、次回は校長に対して抗議すると脅してくる場合が挙げられます。このような暴力・暴言という不当な手段を行使して、自分の要求を通そうとするのはまさにモンスターペアレントの典型ともいえるでしょう。
事実とは異なる主張
モンスターペアレントでややこしいケースとして事実と異なる主張をする場合があります。具体例としては、教師が全員に分け隔てなく接しているにもかかわらず、「〇〇ちゃんには笑いかけたのにうちの子供には笑顔で接してくれなかったので、子供が傷ついている。」などと苦情を言ってくる場合が挙げられます。このケースについては、客観的には理不尽な要求であり、当該保護者は自己中心的であり、モンスターペアレントに該当します。しかし、本人は子供の言うことを信じ切っており、主観的に自分が自己中心的で理不尽な要求をしているとは思っておらず、なかなか歩み寄ることが難しい場合が多いです。
親が行うことを学校に要求
モンスターペアレントの中には、本来親がすべきことを、学校に要求する場合があります。例えば、学校への送迎について送迎バスを用意するように要求したり、教師に送迎に同行するよう求めたりすることがあります。このような保護者は、親としてやるべきことと学校がやるべきことの区別がついておらず、親としての自覚が足りないことが根本的な原因であることが多いです。
無理な主張があった時どうすれば?知っておくべき対応方法
モンスターペアレントに対する無理な主張についてどのように対応すべきか。以下では、知っておくべき対応方法について説明します。
ベースとなる基礎的な法律知識の把握
モンスターペアレントの行為は、場合によっては犯罪が成立する可能性があります。
例えば、
- モンスターペアレントが教師に掴みかかれば暴行罪(刑法208条)
- 掴みかかったことによって教師が怪我をすれば傷害罪(刑法204条)
- 学校の備品を破壊すれば器物損壊罪(刑法261条)
- 教師に向かって「お前を殺すぞ」と言い放てば脅迫罪(刑法222条1項)
- 教師に向かって「こんなことしやがって、金払え。」と脅して金銭の交付を求めて金銭を受け取れば恐喝罪(刑法249条1項)
- 教師に向かって事実無根を並べて「自分のやったことを分かっているのか。土下座しろ。」と言って土下座をさせれば強要罪(刑法223条1項)
- 学校に対して度々無言電話をしたり、恫喝する電話をしたりすると偽計業務妨害罪(刑法233条)又は威力業務妨害罪(刑法234条)
が成立する可能性があります。
主張している内容の記録
モンスターペアレントに対して教員一人で対応させることは精神的負担及び精神的負担の観点から回避すべきであり、組織で対応することが重要です。そして、組織で対応することによって判断について合理性を担保することができます。そのため、学校は教師に対してモンスターペアレントに一人で対応せずに周囲と情報共有するため及び周囲の教師と検討するためにまずは電話録音や聴取した内容を記録に残すなどの主張の証拠化をするように指導することが重要です。証拠化することによって主張が不当であることを立証することが可能となります。
全ての内容に対して謝罪はしない
モンスターペアレントが強く謝罪を求めてきても、全ての内容に対して謝罪してはいけません。モンスターペアレントは、謝罪すればするほど、自分の言い分が正しいと誤解してしまう可能性が高いです。
そのため、学校側として事実として認められる部分について事実があったことやその事実が学校関係者の不注意で起きてしまったことについては謝罪し、その事実によって生徒がどのように受け取ったのかなどという学校としては把握することができない部分については、安易に謝罪せずに生徒の言い分やその生徒の周囲の人間からきちんと事実の確認をした上で、生徒がそのように受け取る可能性があった場合には、そのように受け取る事態を招いたという事実について謝罪することが重要です。
また、学校側として事実と異なる部分については、謝罪すべきではありません。
モンスターペアレント等の保護者対応でお困りの際は弁護士に相談を
モンスターペアレントは、対応が難しく、適切な法的対処が必要な場合があります。是非一度法律の専門家である弁護士にご相談下さい。
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