学校法人の理事の選任・変更について学校側弁護士が解説
学校法人において、理事会は業務に関する意思決定機関です。
安定した学校運営のために、理事会のメンバーである理事の変更は、トラブルが生じないよう間違いなく行う必要があります。
本記事では、
- 学校法人の理事会とは?
- 学校法人の理事の種類
- 理事の変更に関する注意点
などについて解説しています。
理事変更の予定がある学校法人の関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。
学校法人の理事会とは?
学校法人において、理事会は業務執行の意思決定機関です(私立学校法36条2項)。運営方針や事業計画などの重要事項を決定する役割を担います。
理事会の構成メンバーが「理事」です。理事の職務は、理事会によって監督されます。
法律上、理事は5人以上置くのがルールとなっています(35条1項)。
下限が設定されているのは、公共的な性格を有する学校が、少数の理事の意思で運営されないようにするためです。人数の上限は法定されておらず、学校法人の寄付行為(定款に相当するもの)に委ねられています。
理事のうち1人が「理事長」となります(35条2項)。
私立学校法における理事長の主な役割は、以下の通りです。
- 学校法人を代表し、その業務を総理する(37条1項)
- 理事会を招集し、議長となる(36条3項、4項)
- 評議員会の同意を得て、監事を選任する(38条4項)
- 決算・事業の実績を評議員会に報告し、意見を求める(46条)
理事長以外の理事も代表権を有するのが原則であり、法律上は理事長に権限が集中しているわけではありません(37条2項)。
理事会の議事は、寄付行為に別の定めがない限り、出席した理事の過半数で決定します(36条6項)。
理事の選任要件について
校長や、寄付行為の定めに基づいて選任された人が理事となります(38条1項)。5人以上いる理事のうち、少なくとも1人は学校法人の役職員以外の外部理事でなければなりません(38条5項)。
選任の際に注意して欲しいのが、役員(理事・監事)の親族については、同族支配を防止するために制限が課されている点です。
具体的には「各役員について、その配偶者・3親等内の親族は1人を超えて含まれてはならない」と定められています(38条7項)。簡単にいえば「近しい親族は1人まで」ということです。たとえば、親と長男が理事になっているときに、次男は理事に選任できません。
他にも、以下のいずれかに該当する人は、理事になれないとされています(私立学校法38条8項、学校教育法9条)。
- 禁錮以上の刑に処せられた
- 懲戒免職やそれに相当する理由による解雇などにより、免許状が失効・取上げとなり、その日から3年を経過しない
- 日本国憲法や政府を暴力で破壊することを主張する政党などを結成し、または加入した
- 精神機能の障害により役員の職務の適正な執行ができない
以上の要件を満たさない人を理事にしないように、注意してください。
評議員会とは?
学校法人の機関としては、理事会以外にも「評議員会」を設置しなければなりません(私立学校法41条1項)。評議員会は、学校法人の重要事項に関する諮問機関です。
以下の事項については、あらかじめ評議員会の意見を聴かなければなりません(42条1項)。
- 予算、事業計画
- 事業に関する中期的な計画
- 借入金、重要な資産の処分
- 役員に対する報酬の支給基準
- 寄付行為の変更
- 合併
- 理事の3分の2以上の同意で決める解散、目的たる事業の成功不能による解散
- 収益を目的とする事業に関する重要事項
- その他重要事項で寄付行為をもって定めるもの
評議員の人数は、理事会の定数の2倍超にしなければなりません(41条2項)。
現行法上は理事と評議員の兼任は可能なため、評議員の定数が少ないと、理事と兼任する評議員の賛成だけで議決できてしまいます。そこで、理事だけで評議員会の決定ができないように、理事会の定数の2倍超の評議員を置くとされています。たとえば、理事が5人であれば、評議員は11人以上にしなければなりません。
評議員になるのは、以下の人です(44条1項)。
- 学校法人の職員のうち、寄付行為の定めにより選任された者
- 25歳以上の卒業生のうち、寄付行為の定めにより選任された者
- その他寄付行為の定めにより選任された者(学識経験者など)
評議員の中に卒業生が含まれているのが特徴的です。
なお、現在私立学校法改正の議論がなされています。ガバナンス改革の観点から、理事と評議員の兼任禁止が盛り込まれています。
学校法人の理事の種類について
学校法人の理事には、次の3つの種類があります(私立学校法38条1項各号)
- 学校法人の設置する私立学校の校長(学校長理事)
- 学校法人の評議員から選任された者(評議員理事)
- その他、寄附行為の定めるところにより選任された者(その他理事)
3種類の理事の人数配分については定めがなく、学校法人に委ねられています。
学校長である理事(学校長理事)
まず、校長(学長や園長を含む)は理事となります。学校を複数設置しているときは、校長のうち1人を理事とする形でも構いません(38条2項)。校長の職を解かれたときには、理事の職も失います(38条3項)。
寄附行為に定められた(学識経験者等)理事(その他理事)
校長や評議員以外に、寄付行為の定めにしたがって選ばれた人が理事に就任します。たとえば、学識経験者、学校の功労者、関連する宗教法人の役員などが選ばれるケースが多いです。
理事の変更に関する注意点
理事の変更に際しては、以下の点に注意してください。
- 要件を満たしているか確認する
上述した選任要件を満たしているかは、事前に必ず確認してください。役員(理事・監事)の親族が役員になっている状態で、さらに別の親族を理事にすることはできません。
- 所管庁に届け出る
理事の変更があったときには、所管庁への届け出が必要です。
所管庁は、大学や高等専門学校を設置する学校法人については文部科学大臣、高校以下の学校のみを設置する学校法人については都道府県知事です。重任(再任)の場合でも届け出が必要になります。
書式など詳しくは以下を参考にしてください。なお、理事長を変更した場合には、法務局での登記も必要になります。
学校法人の理事の変更でお困りの方は弁護士にご相談ください
ここまで、学校法人に関して、各機関の制度概要、理事の種類、理事の変更に際しての注意点などについて解説してきました。
理事会を構成する理事を変更する場合には、要件を満たすかを確認したうえで、忘れずに届け出をする必要があります。親族を理事にしようとするケースでは注意してください。
近年、学校法人においてもガバナンスが問題となっています。適切に理事を選任し、変更することは、ポイントのひとつです。手続を疎かにしないようにしましょう。
当事務所では、学校法人の皆様の支援に力を入れて参りました。業界特有の事情も踏まえつつ、必要な法的サポートをいたします。理事の変更などでお困りの点がある学校法人関係者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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