給食費を払わない親への請求方法!顧問弁護士なら支払督促が可能です
給食費の滞納は、学校が頻繁に直面する法律問題です。
いま現在、滞納している保護者への対応に頭を悩ませている学校関係者の方も多いのではないでしょうか。
滞納に至る原因は様々ですが、請求して回収できないと、給食の継続的な提供に支障が出てしまうおそれも否定できません。法的手段も含めて、滞納している保護者への対処法を知っておく必要があるでしょう。
本記事では、給食費未納に関する現状や基本的な知識を説明したうえで、滞納している保護者からどのように徴収できるかについて解説しています。給食費の滞納にお悩みの学校関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。
給食費の未納に関する動向
給食費の未納は、多くの学校において深刻な問題になっています。まずは、文部科学省が実施した調査結果を参照しながら、給食費未納について現状や基本的な知識を解説します。
給食費未納が発生している学校法人数・割合
文部科学省は、給食費の徴収状況に関して繰り返し調査を実施しています。現時点で最新の調査結果は平成28年度のものです(文部科学省|平成28年度の「学校給食費徴収状況」の調査結果について)。学校給食(完全給食)を実施している全国の公立小・中学校約28,000校から、50校に1校の割合で抽出して調査が行われました。
調査によると、給食費未納が発生している児童生徒が1名でもいる学校の割合は、小学校で41.6%、中学校で54.5%と半数程度に及びました。小学校では約8,200校、中学校では約4,850校もの学校で給食費未納問題を抱えている計算になります。
また、未納になっている児童生徒数の割合は、小学校で0.8%、中学校で0.9%です。
結果を見ると、学校数でも児童生徒数でも中学校で割合が高くなっています。理由としては、中学生になると制服や部活動などの費用が全体として増加し、給食費を支払う余裕がなくなっている可能性が考えられるでしょう。
給食費の未納が発生してしまう要因
上記調査では、給食費の未納が発生している主な原因についても集計されています。
小中学校合わせた結果は以下の通りです。
- 保護者としての責任感や規範意識 5%
- 保護者の経済的問題 9%
- その他 6%
「保護者としての責任感や規範意識」とは、経済的には支払えるのに、保護者の意識の問題で未納となっている場合です。たとえば「義務教育だから無償のはずだ」「まずい給食にお金を出したくない」「うちの子は小食なのに、よく食べる子と同一料金なのは不公平だ」といった理由で滞納しているケースがあります。
「保護者の経済的問題」は、ひとり親世帯など、経済的な支払能力に問題があって未納となっている場合です。
「その他」の例としては、「保護者としての責任感や規範意識」と「保護者の経済的問題」のいずれであるか明確に判別できないケースがあります。
注意して欲しいのが、上記の結果は学校側が認識している要因である点です。原因を経済的問題とする割合が低くなっているものの、実際には保護者の経済的な困窮を学校側が把握できていない可能性も否定できません。
学校としては、保護者が給食費を滞納している真の原因を探ったうえで、状況に応じて適切な対応をする必要があります。
給食費の請求権の時効
給食費の請求権は、法律で定められた期間が経過すると時効により消滅してしまいます。
滞納している保護者からの徴収を怠っていると、法律的に請求できなくなる可能性があるのです。
従来、給食費の請求権は「学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権」に該当し、2年の短期消滅時効の適用対象でした(改正前民法173条3号)。2020年3月31日以前に発生した給食費の請求権は、すでに時効にかかっている可能性があります。
しかし、民法改正により短期消滅時効の規定は撤廃され、2020年4月1日以降に発生した給食費について、請求権の消滅時効期間は5年となりました(民法166条1項1号)。法改正により、給食費請求権が時効で消滅するリスクは大幅に低下したといえます。
とはいえ、可能であれば早めに徴収した方がよいことに変わりはありません。滞納があった場合には早めの対応を心がけてください。
給食費未納となったら?実施検討すべき対応策
給食費が支払われないからといって、給食を提供しないのは児童生徒への影響を考えると現実的ではありません。
では、給食費を滞納する保護者に対して具体的にどういった方法をとればよいのでしょうか。考えられる対応策をご紹介します。
顧問弁護士などへの相談
給食費未納の児童生徒がいる学校は多く、その要因としては保護者の意識や経済状況が挙げられます。滞納があった場合には、消滅時効にかかる前に、文書・電話での督促や家庭訪問などにより徴収する必要があります。任意での支払いに応じなければ、支払督促などの法的手段を検討しなければなりません。
特に法的手段を検討している場合には、お早めに弁護士にご相談ください。支払督促はもちろん、その後に通常訴訟になった場合も想定すると、弁護士に手続面、法律面のサポートを受けるのが有効です。
当事務所では、学校法人の法律問題に積極的に取り組んでおり、債権回収についても一貫したサポートが可能です。給食費を滞納する保護者への請求では、児童生徒の学校生活に影響を与えないように配慮しつつ、最適な手段で対応できます。
自宅への訪問徴収
すぐにできる対応策としては、保護者から任意に支払ってもらうことが考えられます。
多くの学校で、電話や文書による保護者への督促は実施しているでしょう。電話や文書での通告だけで支払ってもらえれば、それに超したことはありません。
電話や文書では効果がない場合には、自宅に訪問して徴収する方法もあります。自宅に職員が来て対面で請求されると、保護者が応じる可能性は高まります。自宅訪問をすると生活状況を確認できる点もメリットです。
自宅訪問の際には「納付に応じない場合には法的措置をとる」と予告しておきましょう。また、両親にお願いするだけでなく、同居する祖父母等に状況を伝えて協力を要請することも考えられます。
自宅への訪問徴収は有効な方法ですが、職員に時間的・精神的に負担がかかるうえ、不在にしていると接触できないというデメリットも存在します。他の穏当な手段としては、徴収方法の工夫や、就学援助制度の案内などが効果的です。
簡易裁判所での支払督促手続
任意の支払いに応じてくれないケースでは、法的手段をとらざるを得ません。
給食費請求の場合には、簡易裁判所の支払督促手続の利用が有効です(民事訴訟法382条以下)。支払督促手続では、正式な裁判をしなくても金銭の回収に必要な債務名義を取得でき、強制執行が可能になります。
支払督促手続には以下のメリットがあります。
-
手続が簡単
支払督促は簡易な手続です。書面審査であるため、必要書類を提出すれば審理のために裁判所に行く必要はありません。通常の訴訟のように膨大な証拠を提出したり、尋問をしたりする手間も省けます。
-
費用が安い
裁判所の手続においては、所定の手数料を納付しなければなりません。支払督促では、通常の訴訟を提起する場合と比べると手数料が半額で済み、費用面でもメリットがあります。
-
判決と同一の効力がある
仮執行宣言付きの支払督促は債務名義となるため、強制執行も可能です。支払督促は簡易な手続であるにもかかわらず、確定判決と同様の強力な効果が得られます。
-
プレッシャーをかけられる
裁判所から書類が届くとプレッシャーがかかり、保護者の側から支払ってもらえるケースもあります。
これらのメリットがある支払督促手続は、給食費の請求には非常に有効です。ただし、相手からの異議があった場合には通常の訴訟に移行し、時間や手間がかかってしまいます。
給食費の未納でお困りの学校法人様は弁護士にご相談ください
ここまで、給食費未納問題の動向、滞納している保護者に請求する方法などについて解説してきました。
給食費の未納でお悩みの学校関係者の方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
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