モンスターペアレントの誹謗中傷について教員・学校法人に強い弁護士が解説
モンスターペアレントからの誹謗中傷にお悩みではないですか?
モンスターペアレント(いわゆる「モンペ」)とは、学校に対して自己中心的で理不尽な要求を行う保護者です。無理な要求をするだけでなく、教員に対して暴言を吐く、SNS上に悪口を書き込むといった誹謗中傷をするケースも見受けられます。
限度を超えた誹謗中傷に対しては、刑事・民事の両面で法的責任の追求が可能です。
本記事では、
- 誹謗中傷の基礎知識
- モンスターペアレントからの誹謗中傷で刑事責任を追及できるケース
- モンスターペアレントからの誹謗中傷で民事責任を追及できるケース
などについて解説しています。
モンスターペアレントによる誹謗中傷にお悩みの学校関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。
Contents
誹謗中傷の基礎知識
まずは、誹謗中傷とは何か、どういったシチュエーションで起こりやすいかといった、誹謗中傷に関する基礎知識をご紹介します。
誹謗中傷とは?
誹謗中傷は法律用語ではありません。一般的には、根拠のない悪口で相手を傷つけることを意味します。
教育現場においては、モンスターペアレントによる以下の言動が誹謗中傷に該当すると考えられます。
- 教員に対して「無能だ」「辞めろ」などと罵る
- 「○○先生は前科持ちだ」と他の保護者に言いふらす
- 「○○中学では体罰が日常茶飯事だ」とのデマをネット掲示板に書き込む
誹謗中傷の内容によっては、犯罪が成立したり、損害賠償を請求できたりするケースもあります。
誹謗中傷が起こりやすい場所とは?
誹謗中傷が起こりやすい場所としては、まずインターネット上の掲示板やSNSが挙げられます。相手が見えず、匿名で意見を発信できるネット空間では、攻撃的なメッセージが発せられやすいです。学校や教員がネット上で誹謗中傷を受けた場合には、削除請求や投稿者の特定といった対処法が考えられます。
また、対面の場合には、教員が1人で対応していると相手の態度がエスカレートし、誹謗中傷の被害が生じやすいでしょう。複数で対応して記録をつける職員を置けば、誹謗中傷の抑止になるとともに、被害が生じた際の証拠を残せるメリットがあります。
モンスターペアレントからの誹謗中傷で刑事責任を追及できる場合
モンスターペアレントによる誹謗中傷が犯罪に該当するケースもあります。悪質であれば刑事告訴も視野に入れて対応を検討しましょう。
誹謗中傷により成立し得る犯罪としては以下が挙げられます。
名誉毀損罪
不特定または多数の人に対して、学校や教員個人の社会的な評価を低下させる虚偽の事実を示すと名誉毀損罪(刑法230条)が成立します。
たとえば、
- 「校長は不倫している」と書かれたビラを他の保護者に配る
- 「教員が犯罪者だ」とネット掲示板に書き込む
といった行為が該当します。
名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」です。
侮辱罪
事実を示さずに誹謗中傷をした場合には侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。
「無能」「使えない教師だ」といった言葉を直接発したりネット上に書き込んだりするのが、侮辱罪の典型例です。「無能」との発言は個人的な評価を告げているに過ぎず、事実を示しているとはいえないため、名誉毀損罪とはなりません。
侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役・禁錮」「30万円以下の罰金」「拘留」「科料」のいずれかであり、名誉毀損罪に比べると軽いです。とはいえ、近年ネット上の誹謗中傷が悪質になっていることを背景にして、以前と比べて罰則が強化されています。
業務妨害罪
ウソの情報を流す、だます、何らかの圧力を加えるなどして学校の業務を妨害した場合には、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)や威力業務妨害罪(刑法234条)が成立します。
たとえば、
- 学校に執拗に無言電話をする
- 長電話を繰り返して教員が他の仕事に取り組めない
- 殺害予告をネット掲示板に書き込んで休校になった
といったケースが該当します。
業務妨害罪の罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
脅迫罪
生命や身体などに害悪を加えることを告げると脅迫罪(刑法222条)となります。
たとえば、担任に対して「要求に従わないなら命が危ないと思え」と発言したケースでは脅迫罪が成立します。
脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。脅迫した上で土下座など義務のない行為をさせた場合には強要罪となり「3年以下の懲役」が科されます(刑法223条)。
モンスターペアレントからの誹謗中傷で民事責任を追及できる場合
モンスターペアレントによる誹謗中傷が犯罪に該当しないとしても、民事上の損害賠償請求ができる可能性があります。
民事責任を追及できるのは以下のケースです。
個人情報が晒されたら「プライバシー侵害」になる
誹謗中傷の中で教員個人の氏名、住所、電話番号、家族構成など、みだりに公開されるべきでない情報が晒されたケースでは、プライバシーの侵害となります。プライバシー侵害行為は犯罪には該当しないケースも多いですが、生じた精神的苦痛について民事上の慰謝料請求が可能です。
ネット上で情報が拡散された場合には、被害の拡大を防ぐために、証拠を残した上でサイトの管理者に削除請求をする方法が考えられます。加えて、発信者情報開示請求により書き込みをした人を特定できるケースもあります。
慣れていない方がこれらの手続きをスムーズに進めるのは、容易ではありません。一刻も早く進める必要があるため、弁護士への依頼もご検討ください。
誹謗中傷をしたのがモンスターペアレントであると特定できれば、損害賠償請求に進めます。
「名誉権侵害」が主張できるケースとは
誹謗中傷が「名誉権」を侵害していれば、慰謝料を請求できます。「担任は犯罪者だ」など、他人から見た社会的評価を下げる内容の誹謗中傷は、名誉権の侵害にあたります。これは刑法上の名誉毀損罪にも該当し、刑事・民事責任の双方を問えるケースです。
誹謗中傷があっても他人から見た社会的評価を下げていない場合には、刑法上の名誉毀損罪には該当しません。とはいえ、被害者が自分の価値について有している意識(「名誉感情」といいます。)を傷つけると損害賠償を請求できる可能性があります。過度な人格攻撃など、一般常識を超える侮辱行為には民事上の損害賠償責任が生じるのです。
いずれにせよ、ネット上でなされた場合には、プライバシー侵害と同様に削除請求や発信者情報開示請求の必要があります。
無断で顔写真が公開されたら「肖像権侵害」に
教員の顔写真を公開して誹謗中傷がなされれば、肖像権侵害により損害賠償を請求できるケースがあります。
肖像権とは、自分の容貌等をみだりに撮影・公開されない権利です。誹謗中傷とともに教員の顔が特定できる写真や動画がネット上に掲載されれば、肖像権侵害になり得ます。面談中の様子を撮影されて公開されてしまうなど、悪質なケースもあり、適切な対応が必要です。
学校法人への誹謗中傷は弁護士にご相談ください
ここまで、モンスターペアレントによる誹謗中傷について、追求できる刑事・民事上の責任を中心に解説してきました。
誹謗中傷を放置すれば、学校の評判が下がったり、教員がメンタルヘルスや退職に追い込まれたりするリスクがあります。あまりに悪質なケースでは、法的手段も視野に入れて対応を検討しましょう。
誹謗中傷への対応にお悩みの方は、弁護士までご相談ください。弁護士であれば、対処法のアドバイスはもちろん、投稿者の特定や損害賠償請求など必要な法的措置も可能です。
当事務所では、学校法人に関する法律問題に積極的に取り組んで参りました。教育現場であることに配慮しつつ、適切な法的サポートをいたします。モンスターペアレントへの対応にお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。
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