学校の広告にはどんな規制がある?誇大広告や罰則について学校法人に強い弁護士が解説
学校が生徒を募集するために、広告・宣伝は不可欠です。しかし、広告の中に誤解を招く表現があると、不当表示や誇大広告に該当し、違法となる可能性があります。
法令に違反すると、行政による措置命令のほか、損害賠償請求や刑事罰を受けてしまうリスクも想定されます。適正な内容の広告・宣伝にするためには、法令を十分に理解しておかなければなりません。
本記事では、学校の広告・宣伝における不当表示・誇大広告や不正競争行為について、法規制の内容や具体例を解説しています。学校の広告・宣伝をする際には、ぜひ参考にしてください。
広告や宣伝による学校の評判や生徒募集への影響について
生徒や保護者が志望校を選ぶ際には、説明会や文化祭などの機会を通じて実際に学校を訪問した際の印象が、ひとつの判断要素になるでしょう。
しかしそれだけでなく、学校による広告・宣伝の内容も、志望校選定に大きな影響を与えます。
多くの学校が
- パンフレット
- 駅の看板
- 新聞
- テレビCM
- 学校ウェブサイト
などを通じて、生徒募集のための広告・宣伝をしているはずです。
広告には、学校の理念、設備、合格・就職実績などについて記載されます。学校の魅力が伝われば評判が高まり、生徒・学生の獲得につながるため、広告・宣伝の持つ役割は非常に大きいです。
影響が大きい分、内容には細心の注意を払わなければなりません。以下で説明する不当表示・誇大広告や不正競争行為に該当しないように注意してください。
不当表示・誇大広告とは
広告において禁じられている行為として、不当表示・誇大広告があります。広告に事実と異なる記載をして、消費者に誤解を与えてはなりません。
不当表示・誇大広告は、景品表示法5条に定められています。不当表示・誇大広告が規制されているのは、事実と異なる広告を見た消費者が誤解して、適切に商品やサービスを選択できなくなる事態を防ぐためです。
たとえば、まったく科学的根拠がないのに「食べれば必ず成績が上がる」と謳ったサプリメントが販売されていると、信じた受験生が購入するおそれがあります。消費者が誤った情報に基づいて行動しないよう、誤解を誘発し得る一定の表示について規制がかけられているのです。
景品表示法に違反して不当表示・誇大広告をすると、措置命令がくだされる可能性があります(7条)。
措置命令は、違反行為の差し止めや再発防止策を内容とする行政処分です。措置命令に違反すると「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科されます(36条)。
商品・サービス代金の返金までは義務づけられていないものの、事実が公になれば社会的イメージの低下は避けられません。
また、場合によっては、不当表示・誇大広告により得た売り上げの3%分にあたる課徴金の納付を命じられるケースもあります(8条)。
ペナルティを受けないためにも、広告での不当表示・誇大広告はしてはなりません。
不当表示・誇大広告の定義と一般的なパターンの解説
景品表示法5条に定められた不当表示・誇大広告には、以下の3種類があります。
① 優良誤認表示(1号)
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格などに関して、実際のものより著しく優良であると示す表示です。事実に反して、他社の商品・サービスよりも著しく優良であると示す表示も含まれます。
優良誤認表示の例としては、以下が挙げられます。
- 「ブランド牛」と表示されていたが、実際には違った
- 「除菌効果9%」とされていたが、証拠がなかった
- 「他社製品と比べて効果10倍」と謳われていたが、同じ効果だった
② 有利誤認表示(2号)
有利誤認表示とは、商品やサービスの価格などの取引条件について、実際のものあるいは他社に比べて著しく有利な条件であると誤解させる表示です。
有利誤認表示の例としては、以下が挙げられます。
- 「本日限り半額」と表示されていたが、実際にはずっと同じ価格だった
- 「たった〇円で資格取得できる」と宣伝していたが、他にも費用を要した
- 「地域最安値」としていたが、調査していなかった
③ 指定表示(3号)
優良誤認表示や有利誤認表示に該当しなくても、誤認されるおそれがあるとして指定された以下の表示も、規制対象です。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
学校の広告や宣伝における不当表示・誇大広告の具体例
景品表示法の規制対象になる「事業者」には学校法人も含まれ、学校の広告・宣伝においても不当表示は禁止されています。
学校の場合に特に注意が必要なのが、優良誤認表示です。たとえば以下は、優良誤認表示に該当します。
- 「就職率100%」としていたが、就職していない卒業生がいた
- 「東大合格者数県内1位」としていたが、実際は県内2位だった
ここまで露骨なウソでなくても、架空の数字を示すと優良誤認表示になり得ます。
合格・就職実績のほかに、学校の所在地や設備などについて生徒や保護者に誤解を与える表示をした場合にも、法令違反です。
不正競争行為とは何か
広告・宣伝が不正競争防止法上の不正競争行為に該当する可能性もあります。
不正競争行為の概要と法的な根拠について
不正競争行為は、不正競争防止法に規定されています。不正競争防止法は、事業者間の公正な競争環境の確保を目的とした法律です。消費者保護を目的とする景品表示法とは少し役割が異なります。
不正競争防止法2条1項各号に規定された不正競争行為のうち、広告・宣伝との関係で問題になりやすいのは、誤認惹起表示と信用毀損行為です。
① 誤認惹起表示(20号)
誤認惹起表示とは、商品・サービスやその広告などに、原産地・品質などに関して誤認させるような表示をする行為をいいます。
たとえば、以下が誤認惹起表示です。
- 外国産の鶏肉に「国産」と表記する
- 50%しか含まれていないのに「ダイヤモンド100%」と表示する
誤認惹起表示の例をご覧になれば「不当表示と似ている」とお感じになるでしょう。双方の規制対象は重なっており、いずれにも該当するケースがよくあります。
ただし、不正競争防止法においては、他の事業者による差し止め請求や損害賠償請求が認められている点が異なります。違反したときの刑罰は「5年以下の懲役」「500万円以下の罰金」「その両方」のいずれかです(21条2項1号・5号)。
② 信用毀損行為(21号)
もうひとつの信用毀損行為とは、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を広める行為です。「同業のA社は他社製品をコピーしている」とのウソを広めれば、信用毀損行為に該当します。
信用毀損行為があったときには、被害を受けた事業者は差し止め請求や損害賠償請求が可能です。もっとも、刑事罰は規定されていません。
学校の広告や宣伝における不正競争行為の具体例
学校の広告・宣伝における不正競争行為としては、以下が考えられます。
- 「資格取得率99%」と謳っていたのに、実際は50%だった
- 「県内の○○高校ではいじめが横行している」とのウソの宣伝をする
広告・宣伝が不正競争行為に該当すると、他の学校から損害賠償請求がなされたり、刑事罰が科されたりする可能性があります。十分に注意してください。
学校に関する不当表示・誇大広告や不正競争行為については西村綜合法律事務所まで
ここまで、学校の広告・宣伝における不当表示や不正競争行為について、法規制の内容や具体例について解説してきました。
広告・宣伝は生徒募集のためには不可欠ですが、内容にウソや誤りがあってはなりません。「この程度の誇張は大丈夫だろう」と考えていても、法令違反になる可能性があります。
景品表示法や不正競争防止法に違反すると、行政・民事・刑事上の法的責任を問われるリスクが高いです。広告を出す前に弁護士に相談し、表現に問題がないかを確認するとよいでしょう。
学校の広告・宣伝における不当表示や不正競争行為に関しては、西村綜合法律事務所までご相談ください。当事務所は学校法人の皆様から数多くの相談を受けてまいりました。業界特有の事情も踏まえて、適切な法的アドバイスをいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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